【2018/9/13 デュオコンサートの模様】

バッハとベンダ〜ベルリンを彩る響き〜

大嶋義実(京都市立芸術大学教授)
三橋桜子(京都市立芸術大学非常勤講師)

 9月13日、スミス記念堂にて、国際的に活躍するフルート奏者、大嶋義実京都市立芸術大学教授とチェンバロ奏者、 三橋桜子同大学非常勤講師による「Bach & Benda〜ベルリンを彩る響き〜」を開催した。過去、ほぼ年1回の頻度で6回、 大嶋先生とヤロスラフ・トゥーマプラハ芸術アカデミー教授による講演・公演を提供してきた。 これは、大嶋先生が毎回異なるテーマで社会・歴史・文化的見地を示し、それを一流の演奏で検証するものである。 今回は、トゥーマ先生の急病により三橋先生が急遽代役を務め、31年の共演歴を持つベテラン・デュオの円熟とは異なる新鮮な音楽の作り上げを楽しむこととなった。

 今回は誰しもが知るバッハ、そして逆に知る人が少ないベンダ一族中心に、18世紀初頭フリードリッヒ大王下プロイセンの世界が展開された。 バッハー・グノーの「アヴェ・マリア」でフルートとチェンバロの音が会場に響き開始。続き、フルートを好んだ大王が、 チェンバロ奏者として抱えた、大バッハ(J.S. Bach)の次男カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ(C. Ph. E. Bach)による 「ハンブルガー・ソナタ ト長調」でフルートとチェンバロの世界が広がる。続き、C. Ph. E.バッハの同時代人で、 その影響を受けたと言われるジャック・デュフリ(Jacques Duphly)の『クラブサン小曲集』より二曲が演奏され、 チェンバロの音の出し方、構造について大嶋先生が説明。爪で弦を弾き、箱の中で音を共鳴させる点で日本の琴と共通することが、 宮城道雄の「春の海」のデュオ演奏で示される。その意外性に聴衆はますます引き入れられる。 さらに、P.A. ジュナン(Paul A Genin)の「ヴェニスの謝肉祭」で明るく軽い気分になったところで、今回のもうひとつテーマ、 ベンダ一族へと移る。大王の宮廷楽団のコンサートマスター、ヴァイオリニストとして抱えられ、 大王との人間関係が濃かったフランティシェック・ベンダ(Frantisek Benda)と アントニン(Georg Antonin Benda)兄弟から現在まで脈々と続く音楽一族ベンダ家について学んだ後、 兄作曲の「フルートと通奏低音のためのソナタ ニ長調」を聴く貴重な機会に恵まれた。休憩を挟み、 「アメージング・グレイス」のジャズ版で始まった後半は、大バッハの大作「フルートとチェンバロのためのソナタ ロ短調 BWV 1030」。 大嶋先生の解説でわかりやすく解いてもらった後聴くことで、より深く音楽を味わえた。本編はここで終了したが、 日本の曲「小さい秋」さらに、冒頭と同じ「アヴェ・マリア」の一抹の哀しみをふくんだ心にしみるカッチーニ作曲版で、 知性も感性も刺激される講演と公演の夕べが円環を描くように終了した。収容人数50名の記念堂は、みなが一体になれるあたたかく贅沢な空間だが、 新聞等の広報のおかげもあり、予約で早々に満席となり、お断りしてしまった多くの方々へ、申し訳ない気持ちでいっぱいである。 第1回から4回まで行った、客席数200を超える経済学部講堂の早期耐震化が望まれる。              (経済学部教授 真鍋晶子)