【2018/7/9 経済学部講演会の模様】

日本語と韓国語を比べてみよう。

金 廷a(麗澤大学外国語学部准教授)

 言語学の分野で,2つまたはそれ以上の言語を対照することによって,共通点や違いを見出し, それらに対して説明を加える,対照言語学という分野がある(類似した術語に,「比較言語学」という分野があるが, こちらは英語とドイツ語や,中国語やチベット語という同じ系統に属する言語同士を比較することになる). 日本語と韓国語(英語だとKoreanであり,北朝鮮でも話されているのだから,「韓国・朝鮮語」と称すべきなのかもしれないが, 今回の対象は韓国で話されている題材につき,韓国語と呼ぶ)の両者は,文法的にはかなり類似しているのだが, 細かい部分を精査していくと,同じ系統であるとは言えないというのが現在の定説である.というわけで,比較言語学ではなく, 対照言語学の話となる.

 今回は,日本語と韓国語の対照言語学を専門とされる金先生をお呼びし,日本語と韓国語を対照する際の方法論や, 先生の研究成果の一部を,言語学を専門としない聴衆にもわかりやすくお話しいただいた.系統的には異なるものの, 日本語と韓国語は文法的にかなり類似している部分(特に形態論や統語の部分)がある上に,地理的にも接近しているため, 両言語において小説やドラマ,映画など多くの翻訳がある.その翻訳に現れるテクストの部分を細かくチェックしていくと, 日本語のある表現Xは,韓国語では同等の表現Yで表される.しかしながら,日本語のXと韓国語のYには意味的には完全に同じではなく, 日本語のXが韓国語では別の表現になっていたり,韓国語のYが日本語では別の表現となったりすることがある. つまり,日本語のXは韓国語のYであるという前提が崩れ,その意味用法に違いがあることが判明するのである (金先生の例では,日本語の「のだ文」(例:道が混んでいる.きっと事故があったのだ)に関して,日本語と韓国語の違いを指摘された).

 さまざまな題材や聞き取り調査なども駆使しての対照研究の成果を,優しい口調で説明され,非常に示唆に富んだ講演であったと共に, 言語や外国語に興味のある滋賀大の学生に,対照言語学の研究に取り組んで欲しいと感じた.
                         (文責 社会システム学科准教授 野瀬昌彦)