【2017/12/15 経済学部ワークショップの模様】

《マンガ学ワークショップ》

漫画論的思考 
メディア比較による漫画の視点

泉 信行 (漫画研究家)

 マンガ学ワークショップ第3回目は、漫画研究家として知られる泉信行氏をお呼びし、 出原が担当する教養科目「自然言語の世界」の1回分を用いて、講演をしていただいた。本講義では、 主に日本語と英語を題材に、言語の文法の背景には解釈者としての人間の「視点」が大きく関わっていることを論じてきたが、 マンガにおける「視点」とも類似性があることを学生に認識してもらうことを意図した企画である。

 言語学では、ある出来事を状況内から把握する「主観的把握」と状況外から把握する「客観的把握」という概念が良く用いられ、 日本語は前者を、英語は後者を好むとされているが、マンガでも作者視点の「全知の視点」 「限定知の視点」と登場人物視点の「主観ショット」のような同様の視点が存在するのみならず、 (日本の)マンガを読む際の右から左へと移動していく視線を基に生まれる準主観ショットも存在することが示された。 また、あるマンガのコマに描かれたキャラクターの向きを反転させることで印象が大きく変化することも指摘されたが、 これも読者の読みの視線方向に追随するか逆らうかということから来るもので、 特に認知言語学言において説明される能動態と受動態の認識の違いと類似した現象であることを学生も気付いたようであった。 学生による感想文を読むと、最初は言語学の講義でマンガがどのように関連するのか見当もつかなかったが、講演を聞いて、 言語にもマンガにも人間の認識の仕方が反映していることが分かった、という意見が多数見られた。 泉氏はマンガ研究を人間の解明と位置付けており、そのためには認知科学や心理学など多様な分野との学際的研究が必要と説かれたが、 その言葉に感銘を受けた学生も多かったのは何よりと思う。

 基本的に学生を対象とした、予備知識を必要としないお話をお願いしたため、マンガ視点論の入門的内容が中心となったが、 外部研究者や教員との質疑応答ではかなり踏み入った議論もなされたのは幸いで、 その議論について自分なりに考察した感想を書く学生も少なくなかった。多くの学生に新鮮な「視点」を与えて下さった泉氏に感謝したい。  (文責 出原健一)