【2017/6/16 経済学部ワークショップの模様】

《地域で活躍する企業経営の実態研究 第1回》    

世界のビール産業とキリンビールの戦略
−滋賀工場の活動も踏まえて−

梅野 匡俊 (横浜国立大学成長戦略研究センター客員教授
         元キリンビール(株)横浜支社長)
安河内 章 (キリンビール(株)滋賀工場 総務広報担当部長)


 上記テーマの講演会が、6月16日15時から総合研究棟<士魂商才館>で開かれた。 まず、元キリンビール(株)で経営企画やマーケティング部門を担当され横浜支社長も務め、 現・横浜国立大学戦略成長センター客員教授である梅野匡俊氏から、 国内並びに世界のビール市場の展開とキリンビールの戦略について報告された。 1990年代から今日にかけて国内ビール需要が漸減し、焼酎・日本酒・ウイスキー・ワイン・第3のビールといった多様化と飲酒文化の成熟化が進んだ。 その中でキリンは、1996年にアサヒのスーパードライによってシェアートップの座を奪われて以降、 「一番搾り」(ビール)や「氷結」(チューハイ)など多様なヒット商品を企画販売して対応するが、 各社ともヒット商品を模して市場参入し、結局いわゆるコモディティー化が進行して各社の同質化が進行する。 そのなかで、各商品別に特定のブランドが定着していった。 また酒類以外の飲料(清涼飲料・茶等々)や医療・アプリ等の分野へ進出して収益強化を図っていった。

 こうした国内におけるきめ細かい変化と多様化と同質化が同時進展するなか、 ビールの世界市場では、他業種の資産家や金融資本家が多額の資本をもって 各地の有力なビールメーカーを次々と買収して巨大なグローバル企業が誕生していった。 こうしたなかで日本のビールメーカーは、現在のような極めて日本的な市場戦略のなかで大規模買収にどう備えるのか、 収益のみでなく独自の飲酒文化をいかに堅持していくのか等の課題に直面しているという現状が明らかにされた。 さすがに経営戦略の中心におられた梅野氏の報告は、実に視野が広く明確で体系的で説得力があった。

 続いて、キリンビール滋賀工場の広報担当部長の安河内章氏から滋賀工場の多用な生産・販売事業の実態と地域貢献事業が紹介された。 滋賀工場は、ビールとともに「午後の紅茶」や「生茶」などのぺットボトルの清涼飲料の生産を行う(キリンビバレッジ)関西の拠点工場であり、 近年は「地域活性化」「滋賀県を盛り上げる積極的企業」を目指して実に多様な社会活動を展開している。 ビール生産では、ビール用大麦から容器に至るまで滋賀県産にこだわった滋賀ブランドのビール作りを目指すとともに、 地域活動では、平和堂やブリヂストンと連携した文化環境活動、龍谷大と連携した学生の「飲酒運転とアルハラ」対応策の支援、 ヤンマーやたねや・クラブハリエと協力した地域まちづくりのイベント参画、高校生のまちづくり創造企画の開催等、 実に多彩な活動を実践している。ビールメーカーとして、ここまで地域貢献事業に邁進するのかと、 一驚を禁じ得ないほどの熱心な企業活動に、改めて日本企業の社会公共に尽力する貴重な姿を確認することができ、 有意義であった。今後、キリンビール滋賀工場へは学生や留学生を連れてぜひ工場見学に参加したいと思った次第である。 参加者20名。 文責:筒井正夫。