【2018/1/26 経済学部講演会の模様】

ソルブ人の言語と文化

笹原 健(麗澤大学非常勤講師)

  異文化間コミュニケーションにおいて,人々と言語の関係を論じる際に, バイリンガルや言語政策,言語接触やそれに伴うコードスイッチングやコードミクシングと言われる現象が発生する. 私自身は,自身の研究フィールドであるパプアニューギニアにおける言語コミュニケーションに関して,研究を進めている.

 今回は,「異文化間コミュニケ―ション論B」の授業内において講演会を実施した. ヨーロッパのドイツで話される少数言語であるソルブ語の専門家である笹原先生をお招きし,ソルブ語を話す人々と文化について, 異文化間コミュニケーションの観点からお話しいただいた.ヨーロッパには,前述のソルブ語以外にも,バスク語やラップ語, ロマ語など,多数の少数民族が話す少数言語が存在する.

 ソルブ人とは,ドイツ南東部のドレスデン近くに位置する少数民族である.ソルブ人はソルブ語と呼ばれる言語を話すが, ソルブ語は系統的にはドイツ語の属するゲルマン語派ではなく,スラブ語派に属する.そのため,語彙的及び文法的な面では, ドイツ語よりもスラブ語であるポーランド語やチェコ語に近い.しかしながら,ドイツ語との長年に渡る言語接触の結果, 一部の語彙や文法において,どう見てもドイツ語の影響を受けたと思われる文法事項や語彙が存在する.

 そのようなドイツ人,ドイツ語と密接に関与せざるをえないソルブ人は,様々な政治状況や隣国関係において,話者を減らしてきた. 現在では,ソルブ人の言語や地位はドイツ政府により保証・保護されているが, 経済的な事情からソルブ語の教育やソルブ人の地位が上がったとは言えない.ドイツ語とのバイリンガル, ソルブ人に対する言語政策や,民族的な意識高揚など,ソルブ人が現実的にどのように対処しているかを紹介された.

 講演会に出席した学生からは,ドイツにはドイツ語しかないと思っていたので,非常に勉強になった, 英語以外の少数民族,少数言語について,その雰囲気やその維持に何をすべきか考えさせられた等, 興味を喚起できたと思われる.授業内では,異文化間コミュニケーションの理論的な部分を中心に講義をしてきたが, 今回の講演で,実際の一例を観察できたと思う.
  (文責 社会システム学科准教授 野瀬昌彦)