【2017/11/22 経済学部講演会の模様】

ルーン文字の起源

河崎 靖(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)

 ルーン文字は,ゲルマン人が主に使用し,現在でも北欧を中心にルーン文字で書かれた石碑が多くある. 今回の講演会では,京都大学大学院人間・環境学研究科教授の河崎靖先生をお呼びし,ルーン文字の起源についての講演会を実施した. 占いや北欧関係の小説や映画でも使用されるルーン文字がどういうものであり,どのように生まれたかに関して, 従来唱えられている3つの説に加え,新たな4つ目の説を紹介し,その特質と歴史的意義に考察を加えた.

 ヨーロッパで使用されてきた・使用されているアルファベットを含む文字は, すべてフェニキア人が使用していたフェニキア文字から発するとされている.そこから,ラテン文字やギリシャ文字が後に出現し, ルーン文字も紀元前には成立したと考えられる.しかしながら,ルーン文字がどのような経路を経て生まれ,使えるようになったかについては, 3つの説がある.一つ目がラテン文字説で,2つ目がギリシャ文字説である. しかしながら,世界史の状況や当時の民族分布からすると, 2つの経路は無理があるようである.3つ目は北イタリア文字説であるが, これも,デンマークを中心に残っているルーン文字碑文がイタリアには分布していないため,説得力に欠ける.

 そこで,4つ目の説として,フェニキア人から直接もたらされたという説がある. フェニキア人は船を使ってかなり遠くまで航海することができたため,その船が北欧まで到達した結果, 文字も同時にもたらされたと考えるわけである.さらに,フェニキア文字とルーン文字の音ではなく, 意味の翻訳を通して,独自の体系を持つようになったと説明する.しかしながら,この説自体も確定的ではなく, 謎が解けたわけではない.

 講演会は言語学の特殊な内容にも関わらず,小教室がいっぱいになるほどの聴衆があった.言語を考える際, 文字の話は必ず付随し,文字の話は面白いのだが,その背景に世界史やキリスト教の知識が必要で,非常に難解な内容であった. しかし,先生にはその部分を優しく補足してもらいながら説明され,講演後も聴衆から多数の質問があった.
  (経済学部准教授 野瀬昌彦)