【2017/6/9 経済学部講演会の模様】

周辺からコアへ
若者ことば・方言から言語をながめる

桑本裕二(公立鳥取環境大学教授)

 人間が話す言語について,科学的に研究を実施する「言語学」という学問分野がある。 言語というのは,その内部でひとつの完結したシステムであると共に,言語を使用する人々や社会という外的なつながりをも持つ。 今回は,公立鳥取環境大学の教授で,音声や音韻の点から言語を観察されている桑本先生をお招きして,講演会を実施した。

 桑本先生は,外国語の言語研究と同時に,日本語の方言や若者ことばについての研究もある。 特に今回は,いわゆる標準語や共通語と呼ばれる部分から外れる,周辺部に位置するとされる方言 (桑本先生の職場に位置する鳥取方言及び山陰地方の方言)や若者ことばについてお話いただいた。 日本語研究の場合,多くの研究は標準語や東京方言を主として行われるのだが,一般的に周辺的とされる方言や若者ことばに, 新しい語形や独自の変化形などがあり,注目すべきであると主張された。

 例えば,「食べれる」や「着れる」という「ら」抜きことばであるが,これは標準語では望ましくないとされる 。しかし,これは「食べられる」や「着られる」が受け身と可能と両方の意味を持つため,「食べれる」は可能の意味, 「食べられる」は受け身の意味という語形で意味を区別するという働きで使用されるわけである。

 また,若者ことばで「マジギレ」や「マジになる」という「マジ」というものがある。 これも,本来であれば,標準語では望ましくない用法である。この「マジ」は1980年代から使用され始め, 現在も使用されている点で,流行から定着までが他の語よりも短く,そしておおよそ2年から5年という流行語の寿命からすると, 長く使用されていると言える。「マジ」は1980年代では学校で教師に向かって使用すると怒られたのだが, 今では辞書の大辞林の見出し語にも入っており,2010年代からはその頻度も増加している。

 だとすると,言語を研究する際,コアとなる標準語を見るだけではなく, 方言や若者ことばのような周辺部にある言語の用法も研究するに値すると考えられる。
 (文責 経済学部 准教授 野瀬昌彦)