【2017/5/15 経済学部講演会の模様】

映画を通して見るシンガポール社会

盛田茂(立教大学アジア地域研究所特任研究員)

 2017年5月15日16時10分より、6番教室において盛田茂氏の講演会が開催された。当日は大勢の学生らが集まった。盛田氏はシンガポールの政治や経済に関わるこれまでの歩みを概観したうえで、映画について、制作過程や資金調達、技術者養成、ストーリー展開、キャスティング、行政の方針や媒体言語などの局面がどのような現状にあるのか話をされた。また、そういった枠組みのなかで、制作現場の監督たちがどう対応しているのかといった直接聞き取った話も紹介された。

 とくにこの講演のなかでは、言語政策と関わる形での所得格差の問題、ならびにLGBT(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender)といったセクシャル・マイノリティへの差別の問題にたいして、映画監督がどのように焦点化し、それを映画のなかで表現しているのかが中心的なトピックとして取り上げられ、議論が展開された。それらを焦点化することになる理由は、多くの国と同様に、映画がただ制作されればすぐに人に鑑賞されるのではなく、そこに至るまでに、国による検閲と、「誰が観ることができるのか」についてのレイティングシステムが介在するからである。よく知られているものであれば、18歳以上でなければ観ることができないR18指定があるが、シンガポールの場合はかなり細分化されている。こういった視点を持ちながら、いくつものシンガポール映画のダイジェスト版が上映された。

 20世紀終わり頃よりこの国は、情報、貿易、物流、金融等さまざまな機能をグローバルな規模でハブ化させる振興策を取ってきており、2000年以降は映画もまたその対象となってきた。その結果、従来よく見られた娯楽中心のストーリーとは異なる、個人の内面の葛藤や人の機微に触れるような表現を映画でみせるニューウェーブと呼ばれる監督の作品が続くようになってきた。またその一方で中国でも映画振興策が展開しており、近年シンガポールの監督への資金援助も始まったという。今後も両者の覇権をめぐる戦いが映画振興につながることを期待したい。  (福浦厚子)