【2016/10/26 経済学部ワークショップの模様】

《日台国際交流の多面的研究 第2回》

台湾近現代史を生きた人々
 その人生とアイデンティティー

筒井正夫 本学教授

  本報告ではまず、台湾の歴史について、1.日本領有前史、2.日本統治時代、 3.戦後に分けて概説され、特に日本統治下については、衛生・医療行政の施行と上下水道の整備等による風土病・伝染病が減退、 アヘンの漸禁政策による封じ込め、医療教育の普及による専門医の養成、さらに近代的土地所有制度の確立と初等・中等・高等教育制度の普及、 また道路・鉄道・港湾・灌漑施設等インフラの整備・拡充、精糖業・農業等近代的産業振興、治山治水と近代林業の推進等により、 先住民との間に軋轢を生みながらも近代化が推し進められたことが説明された。戦後は、支那大陸からやってきた国民党の統治下に、 2.28事件やその後の長期にわたる戒厳令といった過酷な弾圧が続いたが、李登輝の指導の下に平和裏に民主化が達成され、 経済も目覚ましい発展を遂げ、今日に至っていることが示された。

 このあと、日本統治時代から戦後の激動の世の中を生き抜いた5人の台湾人の人生を、 彼等自身の肉声と貴重なビデオ記録によって映しだした映像記録を鑑賞した。台湾人として生まれながら日本人として育てられ、 日本人として戦い、戦後は中国人として生きねばならず、民主化の後は、改めて台湾人としてのアイデンティティーを模索する5つの人生が、 語られ、映し出された。彼らは、戦後日本人としてのアイデンティティーを忘れさせられていった日本人より日本人としての本質を守り抜いており、 その偽らざる心情から発せられる言葉は、聞く者の心を強く捉えた。日本による台湾統治の実態はいかなるものであったのか、 大東亜戦争の本質とは?また戦後国民党による統治とは何だったのかを、深く問いかける映像と言質であった。

 映像鑑賞の後は、教官や学生たちからも様々な感想が発せられ、問題の所在がいっそう明らかとなった。 今回は、単に書物や資料等からではなく、戦前・戦後を実際に生きた台湾人たちの実像と肉声から、 日台関係の複雑さと深みを学習する貴重な機会となった。 参加者:約40名。