【2016/8/2 経済学部ワークショップの模様】

《文学研究会―Enrich your Life through Literature―》
   

日×英 詩の翻訳
「ロミオとジュリエットが初めて交わす言葉」

笹尾純治 本学准教授

 本ワークショップでは、シェークスピアの『ロミオとジュリエット』の第一幕、 ロミオがジュリエットに一目ぼれをするシーンにおけるふたりの対話を中心に、英語詩を日本語に翻訳するときにおこる諸問題について、 本学部准教授の笹尾純治氏にご報告いただきました。

 選ばれた対話は、14行から成り立つソネットといわれる詩形になっています。 若い男女の対話がひとつの「詩」になっており、各行の最後の単語がababcdcdefefggの韻を踏んでいます。 笹尾氏は、一行一行における(英単語の)音節の「強弱のリズム」を分析。14行すべての行が10音節で、 「弱強五歩格」を基本とするリズムになっていることを解説。つまり、この若い二人の対話は、韻を踏み、 「弱強五歩格」のリズムを基調としながら、しかも、非常に高度なwitにとんだ内容の対話だということが、 テクストの詳細な分析から明らかになりました。

 この対話の「韻」と「リズム」と「言葉遊びに満ちたwit」のすべてを、果たして日本語に訳すことは可能なのか。 ここに焦点を当て、9名の日本人作家・研究者による翻訳の比較がおこなわれました。 初めてシェークスピアの全作品を日本語に訳した坪内逍遥のもの(1910年)からはじまり、 久米正雄訳(1922年)、横山有策訳(1933年)、中野好夫訳(1951年)、福田恒存訳(1964年) 、大山敏子訳(1966年)、小田島雄志訳(1983年)、平井正穂訳(1988年)、松岡和子訳(1996年)がならぶと、 この100年で主なものだけでも9種類もの訳があることにまず驚きます。詩の形で訳されたものや、 詩としての改行を無視した散文訳まで、幅広い形で訳されていることもわかりました。

 日本語訳では原文にあった韻も弱強五歩格のリズムもいかすことができないうえに、 witに富んだ言葉遊びを含む対話の内容さえも充分に伝わっているとはいえないことが、 9種の翻訳比較から明らかになりました。詩の翻訳の難しさと、奥の深さについて再考させられるよい機会となりました。

 専門知識がないと難しい英詩の読解ではありますが、発表では、よく知られている(はずの) 『ロミオとジュリエット』の「意外な事実」(「ジュリエットがたった13歳であること」や 「ロミオは実は他の女性に恋焦がれていたこと」など)についても説明があり、質疑応答でも会話がはずむ、 出席者8名全員がそれぞれに楽しめる会となりました。                          (文責・菊地利奈)