【2016/5/17 経済学部ワークショップの模様】

《ワークショップ ReD》

ドキュメンタリーとしての選挙

杉岡太樹 (映画「選挙フェス!」監督)

 今回のワークショップでは、「ドキュメンタリーとしての選挙」と題して、 映画「選挙フェス!」(2015年)の 杉岡太樹監督にお越しいただいた。

 選挙を題材としたドキュメンタリー映画は、自民党公認候補を追った想田和弘監督「選挙」(2007年) ・「選挙2」(2013年)や藤岡利充監督の「立候補」(2013年)、 金子遊監督の「ムネオイズム 〜愛と狂騒の13日間〜」(2013年)など近年数多く制作されている。

 ワークショップに先立ち、映画「選挙フェス!」の上映会も行ったが、 通常では街宣車の上や駅頭で話している姿しか見えない候補者の、 それ以外の表情を見ることができ新鮮だったなどの感想を聞くことができた。

 映画上映後のワークショップでは、杉岡太樹監督がこの映画を撮ろうと思った動機や、 被写体との距離をどのように取ったかなど、質疑応答が繰り広げられた。

 ドキュメンタリーで常に課題となるのが客観性であるが、 監督としては単なる候補者の応援映画にならないようにしながらも、 やはり被写体に興味を持った時点で完全なる客観性はもはや得られないというジレンマに遭遇する。 「自分がこの候補者に投票したらもはやこのドキュメンタリーは映画としては成立しなくなるのではないかと考えた」 という監督の言葉は印象的であった。

 また、ディスカッションは映画の主人公にも及び、 ライブ形式の街宣演説という新しいスタイルに対しては「芸術の政治利用ではないか」という意見もあった。 映画表現も一つの芸術であるとすると、前述の客観性の問題とともに、 この問いは映画制作者にも向けられるものであるが、政治も芸術も表現という観点からは不可分であると考えることもでき、 熱のこもった議論が展開した。

 若い世代の政治意識についての議論では、参加者から「政治を自分と直接関わるものとはなかなか認識できない」 「シールズの人びとが頑張っているのは知っているが、遠い世界の話のように感じる」といった率直な発言もあった。 これに対して、「日常の中で何を選びどう行動するか、既にそれらが政治である」と、 生活上の実践や実感と結びつけながら政治を捉え返す見解が示され、示唆的であった。  (文責:中野桂)