【2016/7/21 経済学部講演会の模様】

グローバリゼーションと住民主体の村おこし
−北タイ山村地域におけるLinkの経験から−

木村 茂 (元チェンマイ環境NPO Link代表)

 木村氏は、タイ北部の少数民族の村々の自立を支援するために、2004年より10年余りチェンマイに現地拠点をおいた Link(森と水と人をつなぐ会)というNGO (2008年よりNPO)で活動されました。 その経験をもとに、発展途上国のマイノリティの人々がグローバル化した世界経済の中でどのような問題に直面しているのか、 また具体的にどのような活動をされ、とくにどのようなことを心掛けられたのかについて講演をお願いしました。

 講演は、T 私たち日本のくらしと開発、グローバリゼーション、U 東南アジアの人々のくらしと森の歴史、 V 資源争奪!〜森のなくなるメカニズム、W 持続的な発展のために〜村人が主役の森林再生に賭ける、の4部構成でした。 Tでは、地球全体や日本の森林被覆率を問いかけたり、 トイレットペーパーを各人が少し節約するだけで日本全体では地球何周分の紙が節約されるのかを問いかけたりというように、 楽しい雰囲気の中で基礎知識が確認されました。 Uでは、日本がかつて東南アジアからの木材輸入に頼ってきたことが振り返られるとともに、 熱帯の森がその再生速度のみを取り上げても私たちのイメージする森とは異なること、 さらに村人にとって森は食料や燃料や家屋の材料など種々の資源を供給してくれるいわばスーパーマーケットなのだということが語られました。 Vでは、@ 豊かだから貧しくなる人たち、A "守る"と破壊される森とくらしという二つのキーワードを基に、年表も使って、 外貨獲得政策や略奪的企業によって銃を手にした人々も動員されて森が破壊されていった時代や、 その後の森林保護政策の下でかえって村人が苦しめられた経緯が語られました。最後にWでは、 村の地図づくりと村の百科事典づくりというLinkが行った代表的支援活動について紹介されました。 前者は、村の森のなかでとくに大切な場所を守るために行政に保護林として指定してもらおうとすれば 正確な地図の提出を求められるという課題に応えようとした活動です。後者は、村の地図や歴史や生態系、 住民による保全活動の記録をみんなで話し合い、共有し、外に発信するとともに、村の実態、価値、 可能性を認識することをめざした活動ですが、完成した事典は子どもたちにも好評で、世代を超えた村のつながりの構築にも役立ったようです。

 最後に、活動にさいしてとくに心掛けられたこととして、外部の人間ができることは限られている、 主役はあくまで村人であるという姿勢の大切さを語られました。このことは、 支援者が去ったあとも活動が続くように支援を通じて村人に力を培ってもらうという点でも重要だと思います。 また、先進国の「豊かな」くらしの危うさに目覚めた支援者が自らの掲げる「正しさ」を途上国の人々に押しつけることは誤りというお話も印象的でした。

 こうした途上国の地域住民の支援活動は、私たち自身の未来のためにも大切だと訴えて締め括られた今回の講演は、 繰り返し考えていくことでどんどん膨らんでゆく豊かな内容が盛り込まれており、聴講者にはぜひそのように活かして欲しいと願っています。
                                                (文責 梅澤直樹)