【2016/6/30 経済学部講演会の模様】

国際租税回避とこれからの税制のあり方について

深見浩一郎(公認会計士)

 2016年6月30日、新書業界でベストセラーとなった『<税金逃れ>の衝撃 国家を蝕む脱法者たち』(講談社現代新書)の作者、 深見浩一郎氏を迎え、「国際租税回避とこれからの税制のあり方について」を題とする講演、質疑応答が545共同研究室で行われた。 出席者は、滋賀大学の教員6名であった。出席者全てが研究者であり、深見氏の問題関心と近いテーマを研究主領域とする研究者が多かったことから、 熱の入った講演会となった。会は、前半の1時間は深見氏の報告、後半の1時間は質疑応答という形式で進行された。

 深見氏の報告は、総じてみては、著作『<税金逃れ>の衝撃』を基礎とする報告であった。しかし、 2016年4月に公開され世界中のマスメディアで大きく報じられたパナマ文書について深見氏の見解が紹介されたり、 イスラムの寄進制度であったワクフについて著作よりも詳しい紹介が行われたりするなど、 深見氏の関心の広さと研究の深化を出席者全員が感じる報告となった。

 質疑応答では、出席者全員から質問が発せられた。全ての質疑応答の内容を余すことなく報告することは紙面の制約上、 不可能であるから抜粋して報告する。一つ目の質問は、1980年代にタックスヘイブン、ないし、 多国籍企業と国際租税問題が本格的に注目されるようになった印象を受けるが、それを示すデータはあるか? また、その画期となった出来事はあるのか?という質問であった。これらの質問に直接答えるデータがその場で提示されることは叶わなかったが、 1980年代に「問題化」すること自体が興味深いテーマであることが参加者の間で認識された。他にも、 深見氏の著作で記述されていたFACTAの関する専門的な質問が、イギリスで2015年に新設された迂回利益税に関する質問が投げかけられた。 また、深見氏が実務家としての側面も持つことから、いわゆるタックス・プランニング業界の事情について質問もあった。 会は、租税回避行為は今後ますます複雑化していくのか?という質問をきっかけとして収束の方向に向かった。 こうした租税回避問題の解決は、まず専門家だけでなく、「我々」が税金の問題を我が事として認識することから始まるとの認識が共有された。 そして、その重要な啓蒙書、研究書の一つとして深見氏の著作が位置付けられるとして、会は一段の区切りを迎え、大きな拍手の中、 深見氏を迎えての講演会の幕が閉じた。
                                             (経済学部講師 井澤 龍)