【2016/5/23 経済学部講演会の模様】

利益計算の構造

藤田昌也(九州大学名誉教授)

 簿記会計の意義として利益は直接見ることができるのかという命題があるが、 それは所有物の増減によって表現される。利益の形態化が簿記会計の骨子である。

 簿記には単式簿記と複式簿記がある。単式簿記の特徴はすべての商品の利益合計はわかるが、 いずれの商品から、いくらの利益が生じたか、つまり利益の原因は不明である。 単式簿記は中世イタリアのベンチャー企業の発展(初期パートナーシップ)とともに発展した。 そこでは投資商品別に損益の計算の必要があったからである。 その後口別(出資者別)損益計算(複式簿記)の発生につながっていくのである。

 複式簿記は利益の分配を行うものであるといえる。貸借対照表と損益計算書の関連は、 損益計算書利益(ひとつひとつの利益)の合計が貸借対照表の利益(全体の利益)であり、 換言すると、貸借対照表の利益を損益計算書が配分しているともいえる。 貸借対照表の利益が損益計算書によって期間配分されているとみなされ、 多様な配分、多様な会計方法が考えられるが、それを規則化したものが会計基準である。 貸借対照表の利益計算は商法(会社法)の役割であり、損益計算書による期間配分は会計基準の役割である。

 貸借対照表の利益=Σ損益計算書の利益=Σ期間利益において、 貸借対照表の利益は収入と支出の差額といえる。つまり収支差額が、 収益と費用によって期間配分されるといってもよい。

 最近の問題として、原価評価と時価評価がある。純資産直入法では、 損益計算書が純利益の計算の時「評価差額」は資本修正であり、 包括利益では、Σ包括利益(発生主義)=Σ純利益(実現主義)で、 収支差額は同一で、期間配分の方法が異なる。

 収益・費用と資産・負債に関して、例えば 包括利益=期首期末の純資産の比較の増減とされる。 これは「資産・負債中心観」あるいは「資産・負債アプローチ」といわれる。 つまり資産・負債の増減があって、収益・費用の決定が可能になるという考え方である。

 複式簿記の発展は、会計構造の変容、つまり貸借対照表の利益=Σ損益計算書の利益 の変容といえよう。 株式会社会計と貨幣価値変動会計を概観することによって考察する。

会社法会計の役割
 会社法会計の領域と課題として、右項が会計基準の領域とすると、 会社法は出資者に帰属する利益の計算、すなわち処分可能額の計算である。 貸借対照表の利益=Σ損益計算書の利益において、貸借対照表の利益>Σ損益計算書の利益とすることもできるし、 貸借対照表の利益<Σ損益計算書の利益 とすることもできる。利益の資本化、 資本の利益化ということが商法(会社法)の会計規定である。 債権者の不利つまり株主の有利 と 債権者保護つまり株主の不利をどのように調整するかであるが、 資本金の一部を減資可能額として区分したものが「資本準備金」である。 資本準備金の設定によって配当が創出されるのであるが、一方で債権者保護がされていない。 そこで利益の全てを配当せずに一部強制積立して、損失補填に備えようというのが利益準備金である。 債権者と株主がリスクを負担しあうのである。

 貨幣価値変動の計算は、貨幣が商品として損益を生む、ということであるから、 貨幣も商品として扱う会計が必要である。貨幣と商品の2項から、 さらにもう1項を加えた会計構造(例えば為替換算会計)が必要となるのである。