【2015/9/18 経済学部ワークショップの模様】

《大学における外国語教授法ワークショップV》

英語教授法の伝統と新機軸

馬本勉(県立広島大学生命環境学部教授)

 今回は県立広島大学の馬本勉氏に講演をお願いした。 氏は、明治初中期の日本で用いられていた英語教科書を分析している英語教育史の研究者であると同時に、 最先端のICT技術を用いた教授法の開発も行っているという、稀有な英語教育研究者である。 タイトルにある「伝統」と「新機軸」は、その二つの分野を反映している。

 はじめに、明治期に用いられていた「英学独習書」、特に「独案内」、「直訳」、「講義」 と言われるものがどのような性質・性格を持っていたかを、膨大な資料をもとに紹介いただいた。 そこには、漢文訓読式と同様な工夫を凝らした訳読法のみならず、 実践的なコミュニケーション力養成を念頭においた音声学習の方法など、 今でいう四技能をバランスよく学習させようとする意図が見て取れた。 これらは現代の英語教育に対して多くのヒントを与えてくれるように思われるが、 実際に氏が応用し実践している方法が「DTR学習法」である。これは、 まとまった英文を聞いて書き取らせ(Dictation)、それを日本語に訳させ(Translation)、 最後に自らが行った和訳をもとに英訳(復文)(Re-translation)させるというものである。 この学習法で特徴的なのは、和訳の際に、いわゆる「きれいな日本語訳」をさせるのではなく、 ある程度のまとまりで区切った英文を、英文の語順に沿って、訳させるところである。 これにより、日本語を介しながらも、英語の語順での理解を促すことが可能となり、 また最後の復文させることで、学生に「英文が書けた!」という達成感も与えることができるという点で、 非常に有効な教授法であると言えるだろう。

 最後に、「新機軸」として、Moodleを使ったアクティブラーニングの実践も紹介下さった。 これはMoodleの掲示板の機能を用いて、ある英文のQ&A、試験問題、全訳を学生自身で作成させるというものである。 このような授業外学習の試みは、いかに学生に積極的参加を促すかなどの考慮すべき点もあるものの、 新しい学習法として注目されている反転学習を拡充させていく上でも、今後大いに行われるべきであろう。

 質疑応答では、教育史を研究していたり、Moodleを授業で利用している本学教員との意見・情報交換も活発に行われ、 確実に本学の教育向上につながったと思われる。参加者5名。 (出原健一)