【2015/7/6 経済学部ワークショップの模様】

《ものひと地域研究会》

1/470の革命

三宅洋平 (音楽家、日本アーティスト有意識者会議代表)

 

 昨年は、経済学部講演会のゲストスピーカーとしてお招きした三宅洋平氏を今年は経済学ワークショップでお呼びした。 三宅洋平氏は1978年生まれで、大学卒業後、一般企業に勤めるもすぐにやめてミュージシャンとなった。 大きな転機となったのは2013年の参議院議員選挙である。 もとより彼の音楽表現は原発などの社会性の高いテーマが含まれていたが、2011年の東日本大震災が大きなきっかけとなり、 さらに2012年の衆議院選挙に脱原発を掲げて山本太郎氏が出馬したことが、自身の立候補の大きな動機となったようである。 ライブ形式の彼のユニークな選挙運動は耳目を集めた。その様子は杉岡太樹監督によって「選挙フェス」と題されるドキュメンタリー映画にもなった。

   今回の講演会では、その参議院選挙から2年が経って、その心境を語っていただいた。 まずは、映画「選挙フェス」を見た感想を伺ったが、粗編集を監督と見たときの感想は「もう一回選挙やったくらい疲れた」とのこと。 そして改めて選挙後の2年間を振返ると、国のあり方とか社会のあり方とかどこに向かって踏み出すことができたのかという空虚な思いと、 後は他の人の選挙応援とか、デモの応援とか、飛び込んでくるスケジュールをこなすことで忙しく、 結局、ミュージシャンとして未だに一曲も作れていないことなど、選挙後の2年間も疲れたというのが感想だった。

   話は最近の政治状況にもおよび、三宅氏としては「気候変動、環境問題が関心の中心であって原発や戦争もその一部であること」、 また「新旧あるいは右左で割れている現在の政治は環境問題をも解決しない」、「憎悪の拡散装置が社会にいっぱいある。 ツイッターの炎上、反差別という名の差別など。表面的にではなく、複雑なものに眼を向けることが必要である」など興味深いお話を伺うことが出来た。

 三宅氏の「選挙フェス」という現象を単純に理解しようとすると、ミュージシャンである三宅氏が(ものづくり)、 その音楽を取り入れた選挙フェスという形で人々を動かし(人づくり)、 そしてそれを通じて環境問題や軍事問題などの解決につなげる(地域づくり)ということになる。 しかしながらそれは一面に過ぎず、三宅氏の話を聞いたりあるいは姿を眺めていると、 氏の中においては、音楽も、政治活動も、そして環境問題などへの取り組みも、すべて対等で主従の関係は無いし、かといってばらばらでもない。 これらを融合しつつ高みに持っていくことにはとてつもないエネルギーがいるだろうと想像できる一方で、 それが出来た暁にはそこから発せられるエネルギーもとてつもないものになるだろうと想像できる。それは社会変革の「核」のようなものだ。

 ただし、三宅氏一人でそれをなし得るわけでもない。三宅氏の「1/470Party People」という曲の中に次のような歌詞がある。 「この国の47都道府県で本気で具体的な実践を生み始める男や女が各県に10人ずつで集い、その470人で、日本は変えられる。 470人の中の一人はでかいよ。で、誰が今日その一人になるか、だ」。

 生活者として、政治的責任を負う市民として、そして地域あるいは地球というコミュニティの住人として、 どう生きるかということが問われていると感じた。 (文責:中野桂)