【2015/6/8 経済学部ワークショップの模様】

《ものひと地域研究会》

超福祉社会に向けて

須藤シンジ (ピープルデザイン研究所代表)

 今回はピープルデザイン研究所の須藤シンジさんをお招きして、超福祉社会についてお話しいただいた。

 超福祉社会とはこれまでの福祉社会のあり方を超えた社会という意味であるが、 それを実現するためのひとつの概念ツールが「ピープルデザイン」である。 ピープルデザインとは障がい者や性的マイノリティ、 あるいは外国人といった少数者の課題を解決するためのデザインであるが、 そのためにファッション性など洗練されたデザインを用いるところに要諦がある。

 講演の中で紹介されたのは、 車いすなどを利用する方にとっても使いやすいポケットの位置などに配慮があるレインコートと、 片手で開閉操作できなおかつ肩に載せても安定する傘であった。障がい者のみを対象とするのではなく、 ファッションセンスの高い消費者にも訴求力のある商品開発をすることによって、販売数を確保し、 コストを下げることが出来る。また、そうした商品を求めて障がい者が街へ出かけていくきっかけも作るし、 それらを身につけて外出するインセンティブも高めることが出来る。

 これまで公的補助の受給者としていわば「オフステージ」におかれていた障がい者が、 ピープルデザインによって消費者として、さらに進めば納税者として、 市場経済の「オンステージ」に登場することが出来るようになる。 そしてこれらのことは、社会の幸福(ハピネス)を増進させるものとして、 経世済民という経済の本旨にも合致するものである。

 こうした活動に須藤さんが取り組むきっかけとなったのは、 ご次男が脳性麻痺を負って生まれてきたときである。「自分や自分の大事な人が困っているときに、 その問題を解決するために経済という手段を使ってほしい」と須藤さんはその話を締めくくった。

 講演の後半は、ハンドバイク(手漕ぎ自転車)で日本一周を行なっているシンガーソングライターの森圭一郎さんと、 そのハンドバイクの制作と普及に取り組んでおられるハンドバイクジャパンの宇賀神一弘さんにもご登場いただき、 鼎談となった。

 森さんは、16歳のときにバイク事故によって車いすの生活となったが、 音楽によって救われて、今では「今のほうが幸せ」と言い切るほどに、輝いている。 現在はハンドバイクで日本縦断をしながら、「困っている人は助けます」 「困っているときは助けてね」という双方の意思表示をかねたLove Hand マークの普及に取り組んでいる。 宇賀神さんは、そんな森さんのためにハンドバイクを制作して提供したのである。

 社会を本気で変えたいと思っている須藤さんや森さんの活動と、 それをものづくり職人として支えている宇賀神さんの姿が織りなすドラマには、 3本の素敵なドキュメンタリーを一遍に見た後のような感動を覚えた。 (文責:中野桂)