【2014/6/24 経済学部ワークショップの模様】

《 Hikone International Workshop on Economics (HiWone) 》

Discrimination through Information Transmission in Networks

Lari Arthur Viianto
Universidad de Guanajuato, Professor

 本ワークショップ(HiWone)は、海外の大学の研究者を招聘して研究報告して頂き、 滋賀大学経済学部における研究環境を国際的に活性化させることを目的としている。 今回はその第二回目の運びとなった。本学研究者並びに本学学生も含めて8名の参加があった。 Lari Arthur Viianto氏は共同研究者と共に、労働市場の分析において、 男女間のソーシャル・ネットワークにおけるつながりの格差が、 男女間の就業・失業の格差に与える影響を分析する研究の報告を行った。

 本研究の基盤にあるのは、Calvo-Armengol and Jackson (2004)の研究論文である。 Calvo-Armengol and Jackson (2004)は、2014年6月24日時点で、 社会学や経済学の国際誌論文から124回も引用されている、非常に影響力の強い研究である。 ここでのソーシャル・ネットワークとは、近年用いられているインターネット上の交流関係を指すのではなく、 社会組織(職場、友人関係、同級生、近隣住人)における人間関係のことを指す。情報を入手する経路として、 自ら情報を獲得する場合に加えて、ソーシャル・ネットワークでつながりある人物から情報を回してもらえる場合も分析する。 労働市場モデルの枠組みでは、個々は一定の確率で失業してしまうが、一方で求職の情報も一定の確率で入手できると考える。 失業中であれば、求職情報を入手すると、自らが就職する。しかし、既に職に就いている場合に求職情報を入手した場合には、 ソーシャル・ネットワークでつながりのある人物に情報を提供する。興味深い点は、ソーシャル・ネットワーク上の他者の就職を助けておくと、 自らが失業したときに、より高い確率で就職ができることにある。これには、恩返し等の概念は必要なく、システムとして成立する現象である。

 Lari Arthur Viianto氏らの研究は、Calvo-Armengol and Jacksonの研究を応用したものであり、 婚姻関係にある男女が同じソーシャル・ネットワークに属していて、求職の情報が得られたときには、 (i)自らが失業しているときには自己の就職に、(ii)次にソーシャル・ネットワーク上の男性に、 (iii)最後にソーシャル・ネットワーク上の女性に、求職情報を提供するような、ソーシャル・ネットワーク上の男女間格差を考察した。 婚姻相手は、あくまでも同性グループの中では最優先されるだけである。そのため、妻が求職情報を入手した場合には、 (i)自ら、(ii)夫に、(ii)男性グループに、(iii)女性グループの優先順位で情報を共有する。しかし、夫が求職情報を入手した場合には、 (i)自ら、(ii)男性グループに、(iii)妻に、(iii)女性グループの優先順位となる。上記の場合には、非常に極端な格差であるが、 情報伝達に確率を付与した場合には、「女性グループより男性グループに高い割合で情報を伝える」のような現実的な仮定となる。 このようなソーシャル・ネットワーク上の男女間格差が、メキシコの女性の就職率の低さを説明するのに適していると、 Lari Arthur Viianto氏は考えている。
  (文責: 吉田裕司、ファイナンス学科教授)

参考文献
Calvo-Armengol, Antoni and Jackson, Matthew O., 2004. The effects of Social networks on employment and inequality, American Economic Review, 94(3), 426-454.