【2014/5/7 経済学部ワークショップの模様】

《 Hikone International Workshop on Economics (HiWone) 》

Index Derivatives and Financial Crisis

Joseph French
University of Northern Colorado, Associate Professor

 本ワークショップ(HiWone)は、海外の大学の研究者を招聘して研究報告して頂き、 滋賀大学経済学部における研究環境を国際的に活性化させることを目的としている。今回はその第 一回目となったが、学外の研究者並びに本学大学院生も含めて10名の研究者による参加があった。 Joseph French氏は、(1)株式市場における暴落を事前に察知する早期警報システム(EWS, early warning system) の構築を目的とした研究と、(2)金融危機前後に株式指数オプション市場のビッド・アスク・スプレッド (bid-ask spread)の変化が「情報非対称性」や「取引費用」から受ける影響がどのように変化するかを 分析した研究の報告を行った。第一の研究は、既に国際誌に投稿して、改訂・再投稿(R&R, revise & resubmit) を行い、最終結果待ちである。

 第一の研究では、1997年1月から2009年12月までの米国株価指数であるSP500(Standard and Poor's 500) の先物取引とオプション取引のデータを用いて、米国株価指数の暴落を予測する方法を検討した。最初に 米国株価指数の暴落を定義するために、以下のように暴落月を決定した。まず、 (当月の米国株価指数)/(過去24か月の米国株価指数最高値)を計算して、それが平均より標準偏差の 2.5倍下回った場合を暴落月とした。この方法では、いわゆるドットコムバブル崩壊による暴落 (2002年4月〜9月)とサブプライムローン危機による暴落(2008年10月〜12月)が暴落月として特定された。 次に、最終暴落月とそれ以前12か月(2001年9月〜2002年9月と2007年12月〜2008年12月)を「危機前期間 」として、最終暴落月の翌月からの11か月(2002年10月〜2003年9月と2009年1月〜11月)を「危機後期間」 とした。インプライド・ボラティリティ(VIX)、(先物とオプション)建玉、(先物とオプション)取引金額、 (オプション)ビッド・アスク・スプレッドを説明変数として、多項ロジットモデルを用いた推定を行った。 さらに予測精度を上げるために、金融マクロ変数も説明変数として追加した。最終的に選ばれたモデルでは 、危機前期間の85%の月において正確に予測され、危機を予測した場合の内21%で危機が発生しなかった。

 現在進行中の第二の研究では、株式指数のオプション取引におけるビッド・アスク・スプレッド (買価格と売価格の差)を、Madhavan, Richardson, and Roomans(1997)に従って、情報を持つ投資家 (informed trader)と情報を持たない投資家(uninformed trader)間の「情報非対称性」による要因と、 「取引費用」による要因に分解した。特に、金融危機時には「情報非対称性」の要因が拡大すると期待 されたが、中間報告を行う現時点ではそのような結果が得られていないことが報告された。今後の研究 の進展が待ち望まれる。 (文責: 吉田裕司、ファイナンス学科教授)

参考文献
Madhavan, A., Richardson, M., and Roomans, M., 1997. Why do security prices change? A transaction-level analysis of NYSE stocks, The Review of Financial Studies, 10(4), 1035-1064.