【2014/12/11 定例研究会の模様】

債券・株式のリスクプレミアムの同時推定
−無裁定価格理論に基づくモデル構築と日本のデータを用いた実証分析−

菊池健太郎 講師

 金融資産のリスクプレミアムは、投資家がポートフォリオ最適化を行ううえで不可欠な入力変数である。 また、リーマンショック以降、先進国で実施されている量的緩和政策の多くは、 リスク性資産のリスクプレミアムの低下を企図するものであり、リスクプレミアムを推定することは、 投資家のみならず中央銀行にとっても重要である。しかしながら、リスクプレミアムは直接観測できないため、 何らかのモデルに基づいた推定が必要となる。投資家が実効性の高いポートフォリオ最適化を行い、 中央銀行が金融政策の有効性を判断するためには、@精度の高い推定、 A複数資産、特に債券と株式のリスクプレミアムを同時に推定する統一的なモデル構築が求められる 。特に、現状のような低金利環境の下でリスクプレミアムを相応の精度で推定しようとした場合、 名目金利がゼロを下回らないモデル構築が求められるだろう。

 上述Aに取り組む先行研究として、金融工学の基本原理の1つである無裁定原理に基づき、 状態変数を用いて債券・株式の価格を表現するものがある。これらの研究で提案されているモデルは、 状態変数の動きを通じて、債券と株式の価格間の依存関係を理解することが可能である。 しかし、名目金利がゼロを下回る可能性があるモデル化となっている。

 そこで本研究では、名目金利がゼロを下回らない金利期間構造モデルとして知られている 「2次ガウス金利期間構造モデル(Quadratic Gaussian Term Structure Model)」を援用し、 債券価格だけではなく株価のモデル化を行った。株価は、将来の状態変数に依存して定まる配当の割引現在価値として、 無裁定原理に基づき決定されると仮定する。配当を現在価値に割り引く際に用いる金利は、 金利期間構造モデルと整合的となっており、債券と株式の価格を統一的に扱うモデルとなっている。 当該モデルでは、株価を定めるパラメータは一般には存在しないが、それらが一意に存在するための十分条件を本研究では与えた。

 本研究は、現状、構築したモデルを日本のデータに適用して実証分析を行っている段階である。 @債券価格・株価の依存関係の分析、A長期国債と株式のリスクプレミアムの推移とその解釈、 B債券や株式のリスクプレミアムの期間構造の形状に内包される含意の抽出を行いたいと考えている。 また、ゆくゆくは、構築したモデルを用いて欧米の分析も行いたい。

 研究会では、参加者の皆様から示唆に富むコメントを多数頂戴した。ここに感謝の意を表すとともに、 それらを今後の研究に活かしていく所存である。 (菊池健太郎)