【2014/11/13 定例研究会の模様】

日米の災害税制と現行税制の問題点

増山裕一 准教授

 本報告では,我が国と米国の災害対応と災害税制の発展経緯,阪神淡路大震災, 東日本大震災と米国の災害税制を比較し,その効果と問題について紹介した。

 我が国の災害税制は,明治期は災害ごとに救済内容の異なる不十分で不公平なものであったが, 関東大震災後に基本法として災害減免法が創設され,戦後,米国の災害税制を参考にして, 税務行政官庁の裁量の入り込む余地のない救済策として雑損控除制度を新たに加えた。 また,伊勢湾台風,新潟地震,阪神淡路大震災や東日本大震災では特例が創設されるなど, 大災害の都度見直されて発展してきた。そして,現在の災害税制は税金を減免するだけの制度から, 東日本大震災の震災特例法では「被災者等の負担の軽減及び東日本大震災からの復興に向けた取組の推進を図る」 という「復興」への役割も期待されている。

 米国では,多くの大規模災害,テロや原発事故などの国家的危機を経験することで, 国家的災害や危機に積極的に対応するために法令と行政機関(FEMA)が整備され, 9・11テロ以後は税制による救済制度も見直され,現在では被災地支援から被災地復興までを含む充実した制度となっている。 大規模災害時の特例では,雇用の回復こそが生活再建の近道との考えに基づき, 被災者救済とともに民間投資を活用した住宅や商業施設の建設など地域経済の再生を支援するきめ細やかな税制が設けられ, 雇用関連の優遇税制も充実している。それは被害地域へ住民が戻らないと復興は進まず, それが更に住民の帰還を遅らせるという,被災の悪循環が形成されてしまうと被災者支援の終わりは見えなくなり, 次第に被災者は被災地に戻ることを諦めてしまうからである。

 我が国との違いは,米国のメキシコ湾岸特区法では東日本大震災の約6倍の減税予算を投入するなど税制の比重が高く, NPOやボランティアなど被災地域で活動する支援者に対する被災者支援税制も充実していることにある。 それは,災害対応において行政の責任は大きいが,行政による対応には限界があるし, 大災害といえども限られた財源の中で災害支援を行う以上,無制限な支援はできない。したがって, 大規模災害では民間投資や民間の協力を呼び込むシステムが必要で,米国では税制が活用されており, 我が国でも参考とすべき制度が数多くある。

 大災害時には税制も注目されるが平常時には関心が持たれず,災害税制の問題が本格的に論じられることは少ない。 しかし,平常時から諸外国の災害税制を含めて検討し準備しておくことが, 大規模災害時に税制が効果的な役割を果たすことに繋がると考えている。

 研究会では,参加者の皆様から,災害税制について,今後の研究の参考となる大変有益なコメントを頂き, この場を借りて感謝申し上げます。 (増山裕一)