【2015/1/7 経済学部講演会の模様】

Poetic Migrations & Transpacific Translations

Jeffrey Angles
Associate Professor Western Michigan University

本ワークショップでは、ウェスタン・ミシガン大学から日本文学研究家のジェフリー・アングルス先生をお招きし、 「Poetic Migrations & Transpacific Translations」という論題でご講演いただきました。

アングルス先生は、これまで多田智満子、高橋睦郎、伊藤比呂美、新井高子などの詩を翻訳し出版されています。本ワークショップでは、 昨年末にアメリカで出版されたばかりの『河原荒草』の英訳『Wild Grass on the Riverbank』を中心に、 移民文学と翻訳文学についてご講演いただきました。

『河原荒草』(2011年)は、伊藤比呂美の物語詩で、第36回高見順賞を受賞した作品です。 アングルス先生はこの長編詩の英訳に8年を費やされました。

アングルス先生は、講演の前半で、翻訳論についての歴史にふれ、各翻訳手法における問題点を指摘しながら、 ヒエロニムスの逐語訳と意訳、英国詩人ドライデンの論じた翻訳論におけるmetaphrase、paraphrase、imitation等、 翻訳論の歴史を説明。近現代の翻訳論については、ドイツの思想家シュライハイマーが述べた foreignizing translationとdomestinizing translation やフランスの翻訳理論家ベルマンが論じた翻訳における 「デフォルメの傾向12点」について、具体的事例をあげながら解説されました。

講演の後半では、具体的に『Wild Grass in the Riverbank』から例をひき、詩の抜粋を原詩の日本語と英訳を読み比べながら、 議論がすすみました。日本語詩を英訳するときの具体的な問題点と、それらの問題点をどのように克服できるのか、 前半で解説された各翻訳手法がどのような部分で効果を発揮する手法になりえるか、についての考察が繰り広げられました。

なかでも、伊藤比呂美の本作の特徴である日本語に英語がくみこまれた表現、何種も使われるカタカナ表記の植物の名前、 そして伊藤の詩の大きな特徴である繰り返しの効果を英訳するときの工夫については、非常に興味深く、 講演の後の質疑応答でもさまざまな観点から有意義な意見交換がなされました。 (菊地利奈)