【2014/6/25 経済学部講演会の模様】

高レベル放射性廃棄物の最終処分について

今田高俊 (東京工業大学名誉教授・日本学術会議第一部会員)

 平成22年9月、内閣府原子力委員会は、日本学術会議会長宛てに 「高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組みについて」と題する審議を依頼した。 これを受け、日本学術会議では「高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会」 を設置して(以下「委員会」と略記)、ほぼ2年をかけて審議したのち平成24年9月11日付で回答を行った。 この「委員会」の委員長を務めたのが今田高俊氏である。

 この審議のタイミングは、偶然というのも憚られるような、かの平成23年3月11日の東日本大震災と福島第一原発の事故、 そしてその後の放射能汚染と並行することになってしまったこともあり、 学術会議の回答はいやが上にもメディアの注目するところとなったのである。

 「高レベル放射性廃棄物」とは、原発を稼働したあとに出る宿命的な副産物で、 いまだ強い放射能を放つ厄介者である。具体的には、 これをガラス状物質に固めてステンレスの細長い容器に納めた固化体であるが、 この固化体は人間が数mの距離で被曝すれば10秒以内に必ず死亡するというレベルのものである。 当初、原子力委員会はこれをいわゆる地層処分(数百mの地下に埋めて最終処分とする方法)するために、 いかなる社会的手続きが必要かを回答するよう期待していたようである。

 当日、今田氏には、「委員会」による「回答」を中心に講演をいただいた。 この「回答」は「提言」というべき重みをもつものと位置づけられ、 そこに込められた注目すべき結論は高レベル放射性廃棄物の「暫定保管(temporal safe storage)」と 「総量管理」の二つであった。「暫定保管」とは、 廃棄物を埋めてしまうのではなく取り出し可能な状態にして数十年のオーダーで保管すること、 「総量管理」とは廃棄物の総量の上限を確定し増分を抑制することをいう。 現在の問題を次世代に先送りせずいま解決するという「地層処分」は、実は次世代に対して無責任であり、 次世代が新技術(たとえば半減期を短くする技術など)を生むかもしれず、 次世代が判断する余地を残す方が責任ある決断だという。 なおこの「暫定保管」というコンセプトは当該「委員会」が世界で初めて提唱したもので、 今後の廃棄物処理問題への影響力が注目される。

 当日の講演および質疑は、新築の「士魂商才館」3階大セミナー室で行われ、 休憩時間にはロビーでのコーヒーブレークを挟むなど、上質な雰囲気のものであった。 市民参加6名を含み参加者25名。

 なお、日本学術会議による「回答」本文は、以下のURLで参照できる。 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1.pdf
また、日本学術会議による月刊広報誌『学術の動向』2013年6月号が 「高レベル放射性廃棄物の最終処分について」との特集を組んでいる。あわせて参照されたい。
 (文責:社会システム学科教授 黒石 晋)