【2014/2/21 経済学部ワークショップの模様】

《大学における外国語教授法ワークショップ》

英語以外の外国語を教えることは
何を意味するか

西山 教行 (京都大学大学院人間・環境学研究科教授)

 西山教行氏は言語教育政策について研究されており、ヨーロッパの言語教育事情にお詳しい。 また大学では、ご専門の科目のほかに教養科目のフランス語も担当されてきた。今回のご報告では、こうした 氏の研究・教育経験のみならず個人史を踏まえたうえで、外国語教育に従事する者がしばしば落ちてしまう陥穽 とそれを克服するための内省について語られた。

 氏も多くのフランス語教師と同様に、文学研究を起点としてフランス語教師となられた。多くの語学教師は このように、ある言語を愛するがゆえに教壇に立つことになる。しかしながら現実の教育の場においては、こう した教師の思いと学生のそれとのあいだには大きな懸隔が生じている。学生は単位の取得といった制度的な目標、 あるいは、その言語を使ってコミュニケーションをしたいという実用的な目標をもって教室にやってきているに すぎず、その言語を愛するどころかなんらの知識を持たないこともある。

 こうした齟齬を埋め合わせるうえで重要なことは、教師自身が対象言語の複層性を認識することである。氏は フランス語の多面性に出会われることで、そこに辿り着かれた。1994?95年の一年間、氏はサン・クルー・フォン トネ高等師範学校附属フランス語教育普及センターで長期研修を受けられた。フランス語教師の養成にあたる教師 や一国のフランス語教育政策の立案者を育成するこの研修にはそのとき、世界各地から14名が集められたが、氏以 外は南半球あるいは東欧からの参加者であった。ここで出会った人々にとってフランス語とは、高級文化を運ぶ、 つまりあこがれの対象ではなく、植民地支配のため、あるいは政治的解放や自由のための言語としてあった。

 フランス語の複層性を知ることは、フランス中心的なものの見方からの脱出、ひいてはフランス語教授法のなか に隠された「フランス中心」というにおいを嗅ぎ取ることができるようになる。フランス語を教えるという営為に 潜む「フランス人を代弁する」というしぐさを批判視できるようになる。

 こうした対象言語の客観化が自らの教育への内省を生み、教室におけるギャップを埋めるための一歩となる。

 なお今回のワークショップには学生2名、学外者2名を含む計9名の参加者をえた。
 (文責:坂野鉄也)