【2014/1/23 経済学部ワークショップの模様】

<公共政策ワークショップ>

レセプトデータ・健診データの活用方法

満武巨裕 (一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究副部長 )

 厚生労働省は生活習慣病有病者及び予備軍を減少させて医療費の抑制を図るため、 2008年に医療保険者に対して、40歳以上の加入者に特定健診・特定保健指導を実施するよう義務付 けた。いわゆるメタボ健診である。また保険者の実施状況と成果に照らして、後期高齢者支援金の 加算・減算を行うインセンティブ制度が導入された。この施策をめぐっては、健診・保健指導によ って医療費は本当に抑制されるのか、厚労省の掲げる高い受診率・実施率を保険者は達成できるの か、またそれを踏まえた加算・減算が実施できるのか、という問題が指摘されてきた。

 満武巨裕氏は、特定健診・特定保健指導データと医療費(レセプト)データの突合分析を用いて 、この施策の実態を評価する一連の実証研究を推進してこられた。今回のご講演ではその貴重な研 究成果が報告された。

 第一に、1健保組合と5市町村国保のデータを用いた考察では、突合分析の対象者が被保険者の1/4程 度に限定され、さらに服薬中の者が除外されるために保健指導の対象者はかなり減少してしまうこ と、そして服薬中の被保険者の医療費のシェアが高いことから、医療費抑制のためには服薬中の人 々を保健指導の対象に加え、重症化を予防する必要があることが示された。

 第二に、23市町村国保のデータを用いた同様の考察では、特定健診の受診回数が多いほど、受診者 の平均年齢が高く、女性の比率が高いこと、医療機関の受診割合も高いが、総医療費は逆に低いこ とが示された。この最後の傾向の背景としては入院医療費の低さも指摘されたが、健診受診との因 果関係までは特定できないということであった。さらに、特定健診の受診に影響する要因としては 「過去の受診」の影響が最も強いという結果が示された。このことは、受診率を改善するための保 険者の取り組みとして、「受診を継続させると同時に中断を減らすこと」が重要であることを示唆 している。またインセンティブ制度との関連では、市町村国保の受診率の達成度を一律の目標値に よって評価するよりも、前年度との比較で評価する方が妥当である、という政策的含意が示唆され た。

 最後に、今回の実証研究のデータ収集に関連して、レセプトデータと特定検診・特定保健指導デー タを含む「医療ナショナルデータベース」についてもご紹介をいただいた。

 ご報告をうけて、実証研究の方法や結果の解釈をめぐって質疑応答が行われた。また米原市の派遣 社会人院生である天野崇氏から、米原市における類似の研究成果もご紹介いただき、国民健康保険 の保険者である市町村の取り組みについても議論された。 (文責 吉川英治)