【2013/7/9 経済学部ワークショップの模様】

《大学における外国語教授法ワークショップ》

複言語主義時代の外国語教育
  ―社会的理念と実践的教育法

河原清志 (金城学院大学文学部准教授)

 大学で英語及び第二外国語を学ぶ意義や語学の授業における教授法を 探るワークショップの第一弾として、金城学院大学の河原清志先生をお招きしました。 河原先生は翻訳・通訳論のご専門で、英語から日本語への翻訳や通訳を認知言語学的な 点から捉える研究をなされているとともに、その研究成果を語学教育に応用されています。 また、今回の講演会はLLB教室で開催されたのですが、河原先生はCALLやマルティメディ アを使用した英語教育においても造詣が深く、教授法について実践例を紹介しつつ、 会場からの質問や議論を整理しつつ、語学教員が持つ教授上の問題点や課題を共有し、 その解決を考えていくというスタイルでの講演会となりました。

 まず、なぜ大学で英語及び第二外国語を学ぶのか、そして外国語を学ぶことで得られ るものは何なのかという議論を通し、日本語と外国語の複言語主義的な言語習得と授 業における実践について紹介いただきました。「複言語主義」とは、多言語主義やバ イリンガルとは異なる概念で、母語である日本語に加え、個々人の能力や実力、環境 に応じて、完全ではないものの外国語の運用能力を複数所持することを意味し、その ような複言語をこなせるよう大学では語学教育をするべきであるとの主張が提示され ました。これは主としてヨーロッパの大学での語学教育で実施されているCEFRの理念 と同じものです。つまり、ネーティブの英語を目標に置くのではなく、「世界の共通 言語としての英語(English as a lingua Franca)」を学ぶことで、日本語と英語との 複言語を駆使することができることを目的とします。

 世界の共通言語としての英語としての背景に「国際化」というキーワードがあります。 「国際化」には3つの種類の国際化があり、メディアの国際化(BBCやCNNのニュースを 見たり、NHKが英語ニュースを放送したりすること)、対外的な国際化(海外旅行や出 張で現地を訪問したり、外国人が日本に来たりすること)、そして3つ目が内なる国際 化です。内なる国際化とは、日本国内で外国語が使用される状況のことで、グローバル 化を目指す日本企業において,英語が社内で話されるようなことを含むとともに、日本 に在住する外国人が日本語を使用するような状況も含みます。この内なる国際化に対応 することが、今日の英語や第二外国語の授業で重要であり、そのためには母語である日 本語と英語(または他の外国語)の運用、複数言語話者との仲介、そしてお互いの言 語の解釈の多次元性を了解するレベルにまで到達することが目標となります。

 そのような国際化に対応すべく、翻訳を積極的に取り入れた英語教育の実践が紹介され ました。具体的には、シャドーイング、スラッシュリーディングなどに認知言語学のエ ッセンスを取り入れたものです。これは、中学・高校までの英語教育を真面目に取り組 んできた学生にとっては真新しく、あまり英語に取り組んでこなかった学生には、説得 力があって理解できる英語を示すことができます。 (経済学部准教授 野瀬昌彦)