【2013/12/10 経済学部ワークショップの模様】

<公共政策ワークショップ>

図書館とまちづくり

渡部幹雄(和歌山大学附属図書館長)

 「身近な仲間であれ、初対面の人々であれ、複数で集まり共同で何かを創る場が あれば、あるいはそのきっかけが生まれる場があると、まちは賑わうんじゃないか」「そんな場が 大学のなかに生まれ、学内外の人々が集まれるといいね」「それは図書館じゃないか」。このよう な発想が、ワークショップ企画の原点にあります。

 このことを確かめるために招聘したのが、渡部幹雄先生です。和大附属図書館長に就任される前は、 愛荘町立愛知川図書館をはじめとするいくつもの図書館の運営に携わってきたプロ中のプロ。この分 野で知らぬ者のいない第一人者です。

 さて、渡部先生のお話を私なりにまとめると、大要次のようなものでした。いわく、「マニュア ル化されたサービスを全国一律に展開してきた図書館も、いまや“地域の実情に沿う”サービスを 考える時機に来ている」、「一方的にサービスを提供するのではなく、利用者からの情報や働きか けを吸収し、共同作業のなかで成長するしくみが大切」等々。

 国内外の図書館の実例も、豊富に提供されました。ノルウェーには大学図書館と公共図書館の合 築例があり、1階で子どもが絵本にふれ、3階では学生が学術書を精読する空間が実現されていると のこと。同様の例は、スウェーデンやイングランドにもあるとのことでした。たとえばウォーリッ ク大学図書館は、下層階が一般の人々も利用するコモンゾーン、中層階は主に学部学生を念頭にお く教養ゾーン、上層階は研究支援機能を充実させた専門ゾーンから構成されているそうです。

 和歌山大学図書館の1日平均利用者数は、約2千人。学生総数がおよそ4千人ですから、相当な実績で す。また、図書館専属の教員が常駐しているため、学外の人々が様々な調べ物をしに来るとのこと。 同図書館には、個々の利用者が静かに本を読む空間と並び、少人数講義やゼミを開催する空間もあり、 3つの壁面がホワイトボードになっている部屋もあります。皆の議論の成果を、文字どおり空間にと どめておくこともできるのです。

 渡部先生の報告を受けて、様々な意見や質問が出ました。そのうちの1つを、紹介しましょう。い わく、「大学図書館にキャンパス活力を吹き込むためには、独習机やゼミルームの他に、身体表現や 舞踊のワークショップを開催する空間があってもよいのではないか」。驚いたことに、海外には、学 生バンドが演奏するスタジオを擁する大学図書館があるそうです。しかもその大学は、ノーベル賞受 賞研究を生み出そうという気概をもった、きわめて研究意欲の高い大学らしいのです。

 まちとは、様々な人間が行き交い、集まり、共同して何ごとかを行う空間です。この空間をにぎわい のあるものにするために、図書館ができることはたくさんあります。まちを大学に置き換えてもよい でしょう。どうやら、大学図書館には、豊かな可能性がありそうです。 (経済学部准教授宗野隆俊)