【2014/3/6 定例研究会の模様】

自動車産業におけるネットワーク分析
−共通サプライヤーにみるメーカーの購買ポジション−

岡本哲弥 准教授

 本研究は、自動車産業におけるサプライヤーとメーカーの取引関係に対して ネットワーク分析を適用することで、メーカー間の購買のポジションを明らかにしようとするものである。

 自動車産業については、トヨタ生産方式、製品開発、サプライヤーとメーカーの企業間関係など 既に多くの研究蓄積がある。とくに、サプライヤーとメーカー間の関係については、主に ダイアド関係を対象にした実証研究が多くを占めている。垂直的には、SCM(Supply Chain Management) 研究に見られるように分析単位は2者間の取引から供給連鎖の方向へと広がりがあり、また、 リレーションシップ・マーケティングでは、焦点企業と多くの利害関係者とのエゴセントリック ・ネットワークへと視野の広がりはあるものの、必ずしも確立された分析手法がある訳ではない。

 実際には、自動車メーカーは複数のサプライヤーから納入する場合がほとんどであり、また サプライヤーも複数メーカーに納入することが一般的である。本研究では、ネットワーク分析によって、 既存研究における分析単位の限界を克服し、現実の多対多のサプライヤーとメーカーの 取引関係を分析の射程に収めたい。具体的には、まずサプライヤーとメーカーの多対多の取引構造 を2部グラフとして捉えることにより、接続行列で表現する。そして接続行列とその転置行列の 積を求めることによって、メーカー間で共通して取引のあるサプライヤー数を示すネットワーク行列 を抽出するのである。

 こうした分析手順に基づき、IRCが発行する『自動車部品産業の実態』(2010年版,2013年版) に掲載されている自動車部品メーカーの協力会加盟状況のデータを用いて、メーカー間で共通する サプライヤー数を示すネットワーク行列を析出した。続いて、このネットワーク行列をサプライヤーの 類似度を示す行列に変換し、多次元尺度法によってメーカー間の購買のポジションのマッピング を行った。さらに、クラスター分析を適用した結果、2010年、2013年とも12社の 自動車メーカーのポジションは3グループに分類されること、そしてこの3年の間にグループ間 でポジションの変動が生じていることを明らかにした。

 研究会では参加者の皆様から大変有益なコメントを頂き、この場を借りて感謝申し上げたい。 議論を通じて、0-1データで表現される接続行列は、取引規模を捨象してしまう一方で、これま で取り上げられなかった小規模の取引やその変化にも焦点を当てるという特徴を認識することできた。 今後、研究会での議論を踏まえ論文として取りまとめ、発表する予定である。  (企業経営学科 岡本哲弥)