【2014/3/15 経済学部講演会の模様】

国土強靭化が日本を救う

藤井 聡 (京都大学教授・内閣官房参与)

 藤井聡教授は、現内閣官房参与として、震災復興とともに来るべき大震災に備える ための国土強靭化策の重要性を訴えられ、国土強靭化基本法の制定を始め、様々な具体的対策の提言 など八面六臂の活躍をなされている。本講演会では藤井教授が、国土強靭化がなぜ必要なのか、なぜ 危機にある日本を救うことになるのかについて、力強く、また大変わかりやすく、時に貴重な個人的 エピソードや笑いも交えられて、全面的に展開された。

 まず、今後30年以内に60〜70%の可能性で発生すると予想される南海トラフ巨大地震(M8以上)の 被害は、死者・行方不明者数32万人以上(東日本大震災・1万9000人)、全倒壊数238万6000棟(同13万棟)、 被害額220.3兆円(同16.9兆円)と東日本大震災の10倍を有に超える規模に達し、首都直下型地震は、 発生確率も被害額もさらに大きくなることが予想されている。しかもそれは一過性の災害ではなく、 交通機関・石油コンビナート・発電所・工場等が破壊され、食料危機が深刻化し、日本経済は長期に わたって低迷して、復旧が進まず被災民や被災地は長期に放置される恐れが懸念されている。国家財 政主導による国土強靭化は、何よりもこうした被害を最小限に防ぐために必要である。

 次に、デフレ脱却による日本経済の救済である。4月以降、消費増税、駆け込み需要の先取りによる 消費低迷、補正予算の縮減等により、日本経済は大きな打撃を受けるが、それを軽減し日本経済を力強 い成長軌道に導くのが、国土強靭化のための財政出動である。事実、2013年のGDPの成長に寄与した のは、輸出でも国内消費でも投資でもなく公共投資であったことが示され、また「実際の政府の負債」 も昨年9月の時点で33兆円も減少しており、日銀の金融緩和による財政問題の深刻化など問題ではない。

 さらに永年の「構造改革」によって日本経済や社会に生じた様々な問題―格差の拡大・地方の疲弊・ 失業率の上昇・中小企業の倒産・産業競争力の低下・建設供給力の衰退等々―が、長期的なヴィジョン に裏打ちされた国土強靭化策の実行によって抜本的に解決されていく。地方経済の立て直しについては、 何よりも新幹線を介した産業や都市機能の地方への分散化と全国的連携、首都機能のバックアップを構 築するなかで実現されていくことが彦根の例も踏まえながら具体的に示された。

 藤井教授の説かれたことは、まさに今日本が直面する危機を奇貨として、それを日本社会・経済の強 靭化によって克服してゆこうとする経世済民の策であり、聴衆にも多大の感銘を与えた。講演参加者には、 多くの学生・大学院生を始め、教員、さらに陵水会の皆さん、彦根商工会議所や市議会議員、滋賀県都市 計画課の皆さんもみられ、総勢70名を超えて盛会であった。 (文責:筒井正夫)