【2013/11/19 経済学部講演会の模様】

Linear and nonlinear comovement in Southeast Asian local currency bond markets: A stepwise multiple testing approach

松木 隆  (大阪学院大学)

  1997年のアジア通貨危機の経験を教訓として、「外貨建て資金依存」と 「借入資金の長短ミスマッチ」を解消するため、アジア諸国は地域内の債券市場の育成に取 り組んできた、アジア債券市場イニシィアティブ(2002)、アジア債券ファンドI(2003)、アジ ア債券ファンドII(2005)。今回の研究報告では、規模が拡大しているアジアの自国通貨建て 債券市場の域内連動性について分析を行ったものである。

 アジア五カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)の現地通貨 建て債券市場の月次リターンを用いて、共和分検定を用いた長期的な連動性の分析を行った。 分析期間は、アメリカ金融危機を含む2001年1月から2012年11月までであった。検定手法とし ては、各ペアの残差の一階差分を残差ラグ項に回帰するEngle-Grangerタイプの非定常性を検 定するものであるが、残差ラグ項の係数に推移関数(transition function)を有するESTAR (exponential smooth transition autoregressive)モデルを用いたKapentanios, Shin and Snell (2006, Econometric Theory)を採用した。また、10組のペアを逐次に検定するため に生じるmultiplicity問題(検定全体としては棄却域が大きくなる問題)に対応するため、 Romano and Wolf (2005, Econometrica)の逐次多重検定方法を採用した。この分析以外に も、頑健性を確認するためにパネル共和分検定も行っている。

 分析の結果、multiplicity問題に対応して共和分を採択しにくいRomano=Wolf法に基づい ても、インドネシア=マレーシア、マレーシア=フィリピン、マレーシア=シンガポールの3 組に関しては、非線形共和分が成立していることが示された。アジア地域の債券市場が域 内政府の連携並びに主導の下で推進されてきたが、今回の分析により、域内におけるマレ ーシア債券市場のハブ的な要素が明確にされた。シンガポールの役割がアジア域内に収ま らず、グローバルな役割により積極的な面を考慮すれば、シンガポールよりマレーシアが 中心的な役割を演じていることも理解が可能である。

 今回報告された研究論文は、既に査読付き国際学術誌に投稿済みで、二回目の改訂要求 (Revise & Resubmit)に対応して再投稿していると伺っている。近日中に、本研究が査読 付き国際学術誌に掲載されるものと確信される。 (吉田裕司)