【2013/6/22 経済学部講演会の模様】

彦根屏風の幽霊

吉田富子さん (美学・芸術学)
吉田敦彦さん (神話学)
小泉凡さん (小泉八雲のひ孫・民俗学)
真鍋晶子さん (本学教授・英米文学)

 6月22日(土)14時から16時まで、講演とトーク「彦根屏風の幽霊」が、滋賀大学 経済学部主催で行われました。これは、22日(土)〜23日(日)、経済学部の協力で 挙行された彦根市誘客ツアー催行事業「彦根ゴーストツアー『幽霊の絵を巡る』」 のオープニングとなる、この事業の中心企画の一つで、本年度の彦根市の地域創造 事業に採択されたものです。彦根城博物館にも、事前に学芸員の方にお話しを伺い、 当日は彦根屏風のレプリカを借り、狂言会に赴かせていただくなど協力を得ました。

 前日までの梅雨らしさとは打って変わった天候に恵まれ、適度な快適さのなか、 14時から講演とトーク「彦根屏風の幽霊」を始めることができました。一般公開の 講座で、80人余りの聴衆を得ました。大正時代に彦根高等商業学校の講堂として建 設され、今は国の登録文化財に指定されている講堂の壇上に屏風のレプリカを置き、 その前で吉田富子先生の「『彦根屏風』、絵解き」の講演が14時45分まで行われ、 大学という日常のなかに異空間が生み出されました。パワーポイントに屏風の細部や、 『花下遊楽図』、『源氏物語絵巻』が示され、講演を耳で、講演に出てくる作品を目 で追うことでより理解が深まりました。先生は既存研究を押さえながらも、特に屏風 右側の4名を『源氏物語』の登場人物と「見立て」られ、特に右端の二人を異界のもの とする独自の論を展開されました。

 休憩後、15時から16時まで、講演で提起された問題をもとに、神話学の学習院大学 名誉教授吉田敦彦先生、民俗学の小泉凡先生、そして文学の真鍋晶子に吉田先生も 交えてトークを行いました。私が異界からのふたりについての能『芭蕉』や木の精 との関連、また、画中画の「瀟湘八景」との関連をアイルランドとアメリカの文学 と絡めてトークの導入をし、全体の司会を努めました。吉田先生が指摘された黄泉 の国、特に『古事記』のイザナギ・イザナミ神話のことを、日本の神話や世界の神 話を独自の視点で展開する比較神話学の一時代を築かれた吉田敦彦先生に詳しくか つ分かりやすく説明していただきました。吉田敦彦先生は吉田富子先生の、「紫の 上説」をさらに強化する意見も述べられ、有機的に講演とトークが絡み合っていく なか、さらに、吉田敦彦先生の話をうけて、小泉先生が神話や『古事記』が息づき、 黄泉の国への入り口も未だに存在する松江・出雲という地を愛したラフカディオ・ ハーン(小泉八雲)の『古事記』とギリシャの神話における黄泉の国への興味につ いて、また、絵のなかの世界とこの世を行き来する話を扱ったハーンの作品、「衝 立の少女」と「果心居士」について話して下さいました。聴衆からの意見や質問も 出て、彦根屏風を期に講堂に様々な世界が渦巻きました。トークの後は、聴衆のみ なさんもレプリカを興味深そうに見に集まられ、なごやかな雰囲気で講堂が大学を 学外の方にも開く空間となっていました。
                                   経済学部教授 真鍋晶子