【2012/7/21 経済学部ワークショップの模様】

<公共政策ワークショップ2012 第3回>

多様な主体の協働による地域再生を考える−長浜・黒壁を事例に−

山崎弘子 まちづくり役場事務局長

 今回は、長浜において行政と市民を結んで中心市街地活性化を応援する多彩な活動を展開しておられるまちづくり役場の山崎事務局長をお招きした。長浜・黒壁は市民が中心となった町おこしの代表的な成功例として全国的にもよく知られており、一昨年のワークショップでもこの事業を牽引してこられた笹原司朗氏にたいへん興味深いご講演を頂いた。今回は笹原氏を長年支えてこられた山崎氏をお招きして、笹原氏と少し異なる視点も交えて黒壁事業についてご説明いただくとともに、NHKの日曜夜の大河ドラマとタイアップした博覧会事業や商店街との協働など、少し範囲を広げてお話いただくこととした。

 講演は、山崎氏の履歴を辿りつつ、山崎氏がまちづくり役場に関わられる経緯についてのご説明から始まった。受講した学生たちのなかにも山崎氏のチャレンジ精神と粘り強さに鼓舞を受けた者は少なくなかったであろう。ついで、まちづくり役場を支えるメンバー、まちづくり役場の機能、黒壁とまちづくり役場を核としたネットワークについて概説くださった。情報発信、ネットワーク、人材育成に大別される事業からまちづくりに必要な機能をあらためて教えられるとともに、設立者、商店街の店主、自治体職員のほかフリーランスや大学教員、主婦が理事に加わっているというメンバーの多彩さや、地元テレビ局、ラジオ局、大学など多様な連携相手とともに、九州の自治体からの出向者を含むという地理的広がりなども印象的であった。さらに、年間1200万円にのぼる経費を行政、商店街、国に頼らず自立的に賄ってきているという姿勢とそのための努力、あまり高らかなミッションはもたないほうがよいという助言は興味深く、教えられるところ多かった。

 さらに、長浜市の概説、黒壁設立の経緯、黒壁の考え方、黒壁の取組と講演は続いたが、黒壁が故郷への熱い想いに支えられていたこと、中心市街地は文化の集積地であり、コミュニティの中核でもあるという認識がやはり共有されていたこと、曳山まつりなどの文化芸術性を長浜の誇りとして大切にし、世界に発信できる国際性をめざした結果がガラス事業であったことなどの確認とともに、大資本の進出によって中心商店街がさびれたからこそ、お金の力でできない文化芸術性に注目したという新しい解説も提示されて興味深かった。もっとも、ここでも西田天香氏という郷土出身の偉人の教えからの影響という笹原氏の講演との共通点にも論及されていたのであったが。

 最後に、博覧会からプラチナプラザ、商店街との関わりに講演は進んだ。プラチナプラザが博覧会のボランティアガイドとして活躍された熟年世代に継続的な活動の場を提供する試みであることは既知のところであったが、5万円を出資する共同経営者としての参加、したがって時給は利潤の分配であって時給70円といった時代もあったこと、プラチナプラザもまた全国的にインパクトを与えて視察者が訪れていることなど、プラチナプラザの具体的活動を知ることができるとともに、少子高齢化社会と地域の活性化をどう結び合わせるかという点でやはり興味深い先駆的取組に育っていることが確認できた。

 商店街のさらなる主体的活動を誘(いざな)う契機として、長浜お雛さまめぐりや長浜五月人形め  ぐりの開催、秀吉さんのおかげ朝市など、近年の取組を紹介くださったり、後継者育成をめざして出島二郎氏による家業育成フォーラムや出島塾がもたれていること、そこでは若者には参加費がきわめて優遇されていることがやはり紹介され、大きいことは必ずしもいいこととはかぎらないという出島哲学にも触れられたが、時間の制約上詳しくおうかがいできなかったのはきわめて残念であった。そうしたなか、熱心な参加者(地元自治体に勤務される社会人院生)に対して1時間にわたり個別の質問に答えてくださるなど、貴重な時間を割いて多くの示唆的なお話をくださった山崎氏にあらためて厚く御礼申し上げるとともに、ワークショップがまちづくり役場と地元自治体職員との交流の機縁となったことを喜びたい。
参加者 17名 (経済学部教授 梅澤直樹)



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