【2012/7/13 定例研究会の模様】

Bid roundness under collusion in Japanese procurement auctions

石井利江子 准教授

 本研究は、公共工事の入札において入札談合が摘発された市場のデータを もちい、入札談合が行われていると入札データにどのようなパターンが生じるかを分析した ものである。入札談合では通常、談合組織のメンバーのうち入札に参加する予定の者が、 事前に集まったり秘密裏に連絡を取り合ったりして、誰が落札するか、落札額はいくらに するかを決め、本番の入札では予定した通りの落札結果になるよう、落札予定者以外は許 容範囲の上限に近い金額を入札する。落札予定者は、自分の入札額を他の入札者に知らせ る必要がある。本研究では、落札予定者は談合におけるコミュニケーションのミスを防ぐ 目的で、切りの良い数字を予定落札額として選ぶのではないか、また、落札予定者以外の 談合メンバーも、任意の大きい数字を選ぶ際には、複雑な数字を避け、切りの良い数字を 好むのではないかと仮説化した。

 2005年、沖縄県の発注する公共工事の入札において152社が課徴金等の行政処分を受けると いう大規模な談合が発覚した。本研究は、談合が活発に行われていた時期、公正取引委員 会が入札者への立入調査を行った後の時期、翌年行われた入札制度改正および独占禁止法 の強化改正以降の時期、という3つの連続する期間について入札データを分析した。

 公正取引委員会による談合摘発の前後のデータを比較したところ、談合が活発だった時期 では、切りの良い数字が入札額として選ばれやすいという傾向が見つかった。さらに、最 も低い入札額は、他の入札額よりもさらに切りの良い数字になりやすい。本研究は様々な 統計分析を行うことによって、このような傾向は談合と関連が深いことが確かめられた。

 研究会では大変有益なコメントをいただき、この場をお借りして感謝申し上げたい。 本論文はその後、国際ジャーナルへのrevision and resubmitを繰り返している。 研究会で報告した際は、基本的な統計手法を用いた仮説検定を行っていたが、現在の バージョンではポアソン回帰モデルを用いている。  (石井利江子)