【2012/7/6 経済学部講演会の模様】

Saddle functions and robust equilibria
宇野浩司 (大阪府立大学大学院経済学研究科准教授)

The free rider problem and duration of research joint ventures : theory and evidence from the EUREKA program
宮際計行
(Florida International University, Associate Professor)

 講演会では2名の報告者を迎え、ミクロ経済学の最新の研究成果が報告された。 まず、宇野浩司氏(大阪府立大学)から"Saddle functions and robust equilibria (V. Nora 氏との共著)"と題して最新のゲーム理論の研究成果が報告された。一般に、完備情報ゲームに は複数のNash均衡が存在しうることが知られている。robustness(均衡の頑健性)とは、その 複数ある均衡のうちよりもっともらしい均衡を絞るための条件であるが、宇野氏の研究は、完 備情報ゲームにおいてあるNash均衡がKajii and Morris(1997, Econometrica)の意味でrobust であるための十分条件を導出した大変興味深いものである。抽象度の高い理論研究であるにも かかわらず、直観的で明快なプレゼンテーションによって定理が説明され、少人数ながら活発 な質疑応答が行われた。

 2人目の報告者である宮際計行氏(Florida International University)からは”The duration of research joint ventures: theory and evidence from the Eureka program (A. Sissoko氏 との共著)”と題して、企業が研究開発等において協力関係を維持するためのメカニズムについ ての研究成果が報告された。企業間の共同研究開発の難しい点の一つは、プロジェクトの成功確 率はメンバーがどれだけ努力したかに依存するにもかかわらず、互いの行動を監視することが出 来ないためにフリーライダー問題が発生する点である。本研究は、協力関係にあらかじめ期限を 設けることで互いの努力を引き出すことが出来る、という命題を理論的に導出するとともに、ヨ ーロッパのリサーチジョイントベンチャーのデータを用いて理論を検証したものである。互いの 行動が監視できない状況で協力関係を維持するにはどうすればよいのか、という問題に関しては Green and Porterの理論などが有名であるが、今回報告されたのはこれに連なる大変興味深い結 果である。

 きわめて興味深く、またハイレベルな2件の研究成果に触れることが出来、大変充実した講演会 となった。                                         (石井利江子)