【2012/1/26 経済学部講演会の模様】

外部クラウドを利用したBCP・災害対策
〜東日本大震災に学ぶ・信州大学のとりくみ〜

鈴木彦文
(信州大学・総合情報センター副センター長)

 昨年3月11日-東日本大震災の影響は非常に大きく、東北地方の各大学の受けた損害 もはかり知れないものであった。各大学は震災直後も復興段階においても困難な状況が続いたが現在 殆どがPC業務が基本のために長期停電による情報発信、連絡手段の欠如、業務停滞は情報処理機器の管理統括組織の 存在形態の分岐点と認識されることとなった。危機管理の考え方として重要なサーバー群は安全な地 域に移設して可用性と頑健性を保証されねばならない。今回、震災前から既に災害に対応できる構想 着手している信州大学の総合情報センターのとりくみを講演いただき、先行する大学として蓄積され た多大なノウハウを紹介され、本学に必要な姿勢や理念を探る契機となった。
 信州大学は本学同様の分散キャンパスであり次の問題点がある。1)大学全体のIT統括責任部署とIT 化戦略の不在、2)情報の一元化・集約化とDBの共用が不完全、3)情報システム導入が部局や業務単位 ごとに不均一、4)経営面のDBの重要性への認識が不十分、5)情報セキュリティの統一管理が未構築、 専門家の人材育成と処遇改善が不十分。このため全学的にIT戦略構想を一元的に取り組める『統合情 報センター』をあらため、また方針決定機関の『情報戦略推進本部会議』の設置をした。
 3・11震災は当事者意識が低かったが、松本市の地震が契機となり推進会議は「外部パブリッククラウ ドやDCに全ての情報システムを設置することでBCP/DRの実現」を承認するにいたる。これら組織変革 は学長のもとトップダウン的に実施したのが成功の秘訣であり、また独法化後の潤沢ではない財源下 でのクラウドの承認は「予算措置なし」という条件が周囲の批判を回避できた理由である。ここで重 要なのは予算措置が無かろうと承認により公式にオーサライズされた点である、という。
 一方、技術面では5キャンパス同時被災が想定されない前提でミラーリング的に学内クラウド設計 をしたが、バックアップ時間の非現実面、運用コストの増加、障害発生件数の増大など極度の問題点 が浮上した。その詳細な分析結果からクラウドは設計するものではなく、商用やデーターセンターな ど既存で実績のある施設・設備にて運用すべきであるという結論を得た。そこでサーバー外部移転仕 様を策定し、現在関連企業に呼び掛けをしている段階である。信州大学では更にリスク回避のため地 域ネットワークへの支援と協力体制の確保もBCP/DR実現に怠りない。

 今回の講演会では情報処理センター関係の教員以外に事務部署や財務部署の担当職員、またシステム 系企業の技術者など震災対応など緊急度の高さを認識した参加者の聴講があった。
                                           (渡辺凡夫)