【2011/12/14 経済学部講演会の模様】

山元春挙の生涯と画業

川ア 昊(元経済学部特任准教授)    

コーディネーター 筒井正夫(経済学部教授)

 12月14日、経済学部14番教室において、本学部の特任准教授として学生の就職 事業に尽力され、今年の3月をもって退職された川ア昊氏を招いて「山元春挙の生涯と画業」と 題する講演会が行なわれた。山元春挙は、滋賀県大津市膳所町出身の日本画家で、戦前には、竹 内栖鳳とともに東の横山大観と並び称された京都画壇の雄である。

 講演では、春挙の生い立ちから、野村文挙や森寛斎に師事して励んだ画業修業、様々な展覧会 に入選して大家への道を歩んでいった道程が解説され、特に晩年の傑作とされる「富士二題」 「瑞祥」(蓬莱山図)「しぐれる瀞峡」を取り上げて、春挙画の特徴が説明された。それは、 一つには、天竜寺に参禅して禅を学び、禅を通して風物の内面を見るという春挙の画家の眼で あり、二つには、そうした伝統的な文化素養とともに、進んで西洋近代の文物や手法を取り入 れていった春挙の開明性にあるとされた。春挙は、風景画でも型にはまった日本画の山水を定 式に則って描くのではなく、実際の山野に分け入って、その風景を禅の眼で見、さらに写生し、 また当時最新の写真も取り入れて、精神性の深い迫真の画面に蘇生させていった。しかも、そ の主法には、洋画家浅井忠から学んだとされる遠近法が活かされ、西洋絵具もふんだんに使用 された。

 それにしても圧巻であったのは、教室一面に張り出された20本にも及ぶ春挙の掛け軸、師で ある野村文挙や森寛斎の軸や屏風、弟子である川村曼舟や山元桜月、杉本哲郎らの絵画の数々 であった。山元春挙展は、県立美術館でも数回行なわれ、代表的な作品については紹介されて いるが、むしろ掛け軸に描かれ、一般家庭で鑑賞されてきた春挙の作品群をこれほど一堂に閲 覧できる機会は、めったにあるものではない。それほど川崎氏のコレクションは、春挙絵画の 美しさの本質とその画業の特徴を、的確に伝えてくれる貴重なものであった。日本の気候風土 は、縦横に走る断層や火山のため日常的に地震や火山爆発に見舞われる脅威をもたらすととも に、こうした深山幽谷の奥深い神秘の美をも我々に与えてくれたのだと、感慨を新たにした。  会場は、そうした春挙の絵画を目の当たりにした参加者の感動で満たされ、これほどの近代 日本画の巨匠が滋賀県に生まれたのかという驚きが会場を支配した。

 若い学生たちに少しでも本物の芸術作品に触れてもらいたいという川崎氏のご好意により、 来春早々、1月11日には、同様の作品群を展覧した講演会を教育学部でも行なうことが予定 されている。ぜひ多くの方々の来場を期待したい。また当日は、経済学部職員の方々に準備作 業で大変御世話になった。改めて御礼申し上げる。           (文責:筒井正夫)