【2011/1/22】

<滋賀大学教育研究プロジェクトセンター「20世紀前期日本の高等商業学校スタディーズ・プロジェクト」 & 経済学部ワークショップ Asian Studies Workshop 六 & Texture in Cultural Backyard X>

「20世紀日本の高等商業学校スタディーズ」
 シンポジウム


  本シンポジウムは、滋賀大学教育研究プロジェクトセンター「20世紀前期日 本の高等商業学校スタディーズ・プロジェクト」、滋賀大学経済学部ワークショップ 「Asian Studies Workshop六」、同「Texture in Cultural BackyardX」 の共催でおこなわれた。報告者名と論題を、報告の順にあげよう。@阿部安成 「高等商業学校を問う、高等商業学校が問う」(開催趣旨説明)、A平井孝典 「小樽高等商業学校と「特別講義」:1923年5月の「パーマー氏ノ英語教授法」ほか」、 B坂野鉄也「『コレポン』の向こう側はあったのか:スペイン語教育のばあい」、 C蓑口愉花「高等商業学校史料の公開@小樽高等商業学校資料へ「緑丘アーカイブズ」 からのアプローチ」、D阿部安成「夜に学ぶ:20世紀前期の長崎高等商業学校における 1万2036名への実務教育」、E横井香織「日本統治期の台湾における高等商業教育の意義」、 F江竜美子「高等商業学校史料の公開Aデータベースと企画展」、G杉岳志「修学旅行報 告書にみる高商生の調査能力」。

  シンポジウムはおおきく、研究報告と史料公開紹介に分かれ、対象とした高等商業学校は、 小樽、東京、彦根、長崎、台北となり、領域でいうと、カリキュラムまたは人事の動態、 スペイン語教育の実施、夜学講習の機能、調査実践と報告書の評価であり、観点としては、 高等商業学校または高等商業教育と地域、複数の、かつ特定の学校にかかわる語学教育が 示された。シンポジウムの課題としてそれぞれの研究報告がこころがけた論点は、第1に それぞれの研究領域における史料の情況を提示し、それをふまえたうえでそれぞれの研究 の意義を明確にすること、第2に高等商業学校を考えるにあたって生徒を焦点とすること、 だった。前者は、これまでにほぼ毎年連続して開催された旧植民地関係資料ワークショップ での成果と蓄積をふまえて設けられた論点であり、後者は、やはりそのワークショップでの 議論を経て高等商業学校史研究にむけてあらたに提起された論点であった(本ページ右上に彦根 高商生徒の集合写真を掲げた)。

  本シンポジウムの内容は、べつに公開される報告書や、そう時間を経ずに編集する予定で ある論集を参照していただくとして、ここで2つの今後の議論の方向をあげておこう。1つは、 メキシコ訛りのスペイン語ということ。ある高等商業学校生のスペイン語は、それを母語と する人びとに通じたもののメキシコ訛りの言葉になっていたという。なかなかおもしろい高 等商業学校のエピソードながら、高等商業学校をなにかの(たとえば、帝国大学の?こうし た基準も妥当?)の2流としたりフェイクとしたりするのではだめなのであって、高等商業 学校というユニークな教育機関をその固有性において考察しなければならないとおもう。 もう1つは、シンポジウムのなかでいくどか披露されたアントワープの高等商業学校にみら れたとおり、同時代の、すなわち19世紀末から20世紀前期にかけてのヨーロッパのいくつ かの国家と地域における高等教育における実学や商業教育との連関において、日本の高等 商業学校を考えることである。

  本シンポジウムの構想は、昨年夏の小樽で開かれたシンポジウムの場でまず練られ始めた。 それはレジュメの余白やホテルのメモ用紙に始まった。暑かった小樽から例年になく雪が降 った彦根でのシンポジウムの連係となった。 (阿部安成。15名出席)