【2010/7/3 経済学部ワークショップの模様】

<湖東地域町おこしワークショップ>
黒壁スクエアによる長浜再生

笹原司朗(前 株式会社黒壁代表取締役社長)

  今回は、本学の近隣、湖北の長浜市において、地方都市のすっかり衰退した中心 商店街を見事に再生したモデル事例として全国的に脚光を浴びた、黒壁プロジェクトについて、同 事業を文字通り牽引してこられた笹原司朗氏から直接にお話をうかがうことができた。

 講演においては、黒壁プロジェクトの前史としての商店街の衰退状況、ガラス事業をコアとして 展開されることとなった経緯、オープン直後の盛況ぶり、そして黒壁○○号館を次々展開されていった 様子等が、改装前・改装後の写真の対比を交えて興味深く提示された。

 黒壁事業に対しては、さすがの同事業も経営的に難しい段階を迎えているというばかりでなく、た しかに多数の観光客を集めて賑わいを取り戻したけれどもほんとうに「地域の中心商店街」として の再生に成功したのだろうかといった批評も散見される。それだけに、笹原氏自身から、まさに地 域社会の危機へのやむにやまれぬ想いに駆られてのプロジェクトであったし、そうした関係者の想 いや実践の基底に曳山祭を支えてきた長浜市民の伝統があり、さらに西田天香氏の「無一物無所有 無尽蔵」という哲学が伏在していることをうかがえたことは印象深かった。また、年間200万人 という数の重みについての指摘、すなわちそれだけの来街者は黒壁のみで収容しきれるものではな く、スクエアを溢れ出して街の活性化につながりうる、じっさい工夫してたくみに対応している商 店もあるという指摘も、傾聴に値すると思われた。

 さらに、ヨーロッパにガラス文化の奥深さを学び、そうした文化としてのガラス事業を時間をかけ て根付かせてゆこうという構想力と覚悟−この点は、「売る」のみでなく、優れた作品を展示して 「見せる」場を設けたり、「作る」工程を見たり、体験できる場を設えることに通じ、リピーター の確保にも貢献していると思われる−、ファンドを集めるに際して、多数の小口の寄付を求めるよ り、経営に関心を持たざるを得ない大口の出資者を募ったという着想、現代の都市民を「市民・私 民・死民」の三つの「しみん」に分類したうえで、どの層にどう働きかけてゆくかという戦略論な ど、現代においてまちづくりに取り組むために何が必要かという観点から示唆深い論点を数多くう かがえた。

 協力者であった出島二郎氏による黒壁の現状認識、評価との微妙なずれについてなど、時間が許せ ばもっと多くの、興味深いお話がうかがえたであろうし、この点、講演にもあったプラチナプラザ の意義や、まちづくりの展望についてさらに議論を深めることができれば、より実り多いワークシ ョップになったと思われる。いつかまた、そうしたお話をうかがえる機会を願うとともに、多忙な 時間を割いて貴重な講演を行ってくださった笹原氏、及びこうした機会の設定を全面的に助力くだ さった「まちづくり役場」の山崎弘子氏はじめ関係者に対してあらためて厚く感謝したい。  文責 梅澤直樹