【2011/2/28 経済学部講演会の模様】

隣りの大国 中国といかに向きあうか
―報道と教育の現場から―

高田 智之
(共同通信国際局中国語グループデスク
中部学院大学・共栄大学非常勤講師)

 昨年の尖閣沖漁船衝突事件をうけて、対中感情は最低の水準に落ち込んだ。 それは世論調査にも明らかに反映されている。しかし、一方で、日中の経済関係は深まりつ つあり、当然のことながら、互いに好きでも嫌いでも引っ越すことはできないのである。

 80年代まで地域の安定と平和を守る戦略的思考が日中両国の関係を支えてきたが、冷戦 構造の崩壊でソ連の脅威がなくなったこともあり、日中両国を近寄らせる原動力が無くな った状況にある。

 また国内環境の変化(対中政策を牛耳ってきた経世会の衰退、外務省チャイナスクール の地盤沈下等、中国とのパイプが細くなってきた)も多々あり、現在の駐中国大使は民間 人の起用になった。さらに靖国参拝での緊張については、中国社会では日本で考えられて いる以上に影響が大きい。

 日中関係に政経分離は可能かどうかであるが、中国は国交回復前から政経不可分であり、 日本経済は互恵の関係とし政治問題で毀損させることはプラスにならない。中国はGDP世界 二位で大国意識を有するようになっており、自信をつけてきている。尖閣事件の反日デモは、 日本のことをよく知らない内陸部で起きており、世界との結びつきが強い沿海地域では感情 的なデモは起きないであろう。一方、日本の方は、世論調査からみても明らかに自信を喪失 する傾向にあり、「膨張中国」への不信感、不安感が高まりつつある。中国に親しみを感じ ないという人は過去最高で八割近くに上っている。

 こうした状況下、報道の問題は大きいと言える。中国のマスコミは党に「道具」として使 われている。共産党中央宣伝部がコントロールしており、例えば昨年10月には、反日デモ再 発を防ぐため中国メディアに対し、国内での対日抗議行動を含む日本関連の報道を厳しく規 制する5項目の通達を出している。また、「パンダ外交」については、中国中央テレビも 「友好の使者」と大きく報道、尖閣事件以降、悪化した日本側の国民感情を改善しようとの 中国政府の思惑をくみとることができる。他方、日本の報道はセンセーショナルであり、例 えば「中国ジャスミン革命」の呼びかけでは一面に刺激的なイメージの写真を載せたりして いる。ワンフレーズコメントは功罪あり、単純で分かりやすいが、先入観を抱かせたり、希 望的観測を述べたりすることは非常に安易である。

 両国国民の現状に目を向け、客観的に報道、議論し、成熟した日中関係に向かわせるのが 両国マスコミの役割であろう。日本の若者はメディアの影響をうけやすい傾向があるが、中 国人の友人を持ち、その友人を通して、生活感覚で中国や中国人のことを知ると、メディア が伝える報道内容と比較でき、複眼的な視点が養われる。