【2010/3/17 経済学部ワークショップの模様】

Texture in Cultural BackyardW
「おたく」と呼ばれる若者たち その拡大と変質

菊池 聡(信州大学人文学部准教授)

 菊池聡氏(信州大学人文学部)の論題は「「おたく」ステレオタイプ― その拡大と変質」であり、世界的に広まりつつある「おたく」という概念が、その発生当初 の意味合いから現在に至るまで、どのように拡大し変容してきたかについて論じられた。 80年代はほとんど「異常者」「犯罪者」と同義と言ってよいかもしれないほどの使われ方 をしていた「おたく」が、90年代から今世紀に入るにつれて、徐々にそのイメージの向上 が見られ、場合によってはある種の「インテリ」として扱われるようになったのはなぜか。 それに関わる数ある要因の中で特に重要なものとして述べられたのは、90年代初めのバブ ル崩壊であった。それ以前のバブル期には、既存経済内で細かな差異に価値を見いだし消 費する「新人類」によって高度消費社会が形成された一方で、「おたく」による消費は、 かなりのものであるにもかかわらず、限られたコミュニティー内によるもので、社会全体 としては注目されなかったが、バブル崩壊後、新たな市場としてマスコミで取り上げられ ることが増え、一般的にも「売れ筋」という評価が得られたことで、消費者層が拡大し、 イメージ向上につながったと論じられた。また初期に「おたく」と呼ばれた人々が理論武 装をして実際の「おたく」の姿をメディアに発信した功績や、(国内よりも)海外におけ る評価の高さも大きな要因として述べられた。

 さらに、(認知)心理学的手法を用いた、「おたく」に対する潜在的態度の調査結果も 紹介され、以前と比べ、イメージが向上していることや、具体的にどのような概念と「お たく」のステレオタイプと結びついているかが示された。

 質疑応答も長時間にわたり活発な議論がなされ、上に記したこと以外でも文化論的に興 味深い現象が多くとりあげられた。一例を挙げれば、男女の「おたく」傾向の違いとして、 男性は「所有志向」が強いのに対し女性は「関係志向」が強いことが述べられたが、これ は数年前に行なわれた井上逸兵氏(慶応義塾大学)のコミュニケーション論に関する講演 でも同様の傾向が取り上げられていた。このような発見は数年続けているTexture in Cultural Backyardの意義を示すものと考えられる。参加者10名。 (文責 出原健一)