【2009/12/21 経済学部ワークショップの模様】

Economics Workshop 2009
Texture in Cultural Backyard W
Students' Bias towards Native Speaking Tutors

School of Economics, The Australian National University 専任教員)

  本ワークショップでは、英語で講義が行われている大学における英語を母国 語とする教員の講義評価と、英語を母国語としない教員の講義評価とを比較し、チューターの 教育効果について報告をおこなった。アメリカの大学を対象とした既存研究では、前者の数値 のほうが高いということが統計的に示されている。本報告では、オーストラリアの首都キャン ベラの大学のミクロ・マクロ経済学の講義評価データを用いて、両者の数値に統計的に有意な 違いがあるのかを検証することを目的とし議論をすすめた。
  オーストラリアの大学では、ミクロ・マクロ経済学の講義は大教室で行なわれるが、週3時間 の講義だけでは、コミュニケーションが一方通行になりがちである。それを埋め合わせるため に、学生を20名程度の小規模なクラスに振り分けて、そこで問題演習を通じて週1時間クラス 担当教員とディスカッションする機会を与える制度がある。この問題演習クラスはチュートリ アルと呼ばれ、その担当教員がチューター(いわゆるTA)である。
  チューターは、主に経済学研究科博士課程所属の大学院生であるが、大学関係者以外の者が非 常勤で採用される場合も多い。ただ、どちらの場合もチューターになるためには、学部スタッ フとの面接にパスしなければならない。つまり、当該大学院生であっても面接の内容次第では 不採用となりうるのである。仮に、大学院生であれば無条件にチューターとして採用されると いう環境下であれば、英語を母国語としないチューターの講義評価が低くなることは十分予想 できる。しかし、本稿のデータではチューターのスクリーニングが行われているため、同様の 結果が得られると予想するのは難しいであろう。
  チューターのスクリーニングが行われていたとしても、学部留学生がほとんど存在せず、地元 の学生が外国人と接する機会がないという状況では、英語を母国語としないチューターが低い 講義評価を受ける可能性が高いと思われる。しかし、本稿のデータに使用されたチュートリア ルに参加する学生は国際色豊かである。留学生の比率は低くなく(15%から30%ほど)、 地元の学生も英語を母国語としない人たちとの会話に慣れている。キャンベラがマルチ・カルチ ュラリズムを掲げるオーストラリアの首都であることの大きな特徴であるといえよう。チュータ ーのスクリーニング、国際色豊かな学生という二つの特色を持ったデータを使用することで、 既存研究で統計的に示された二つのグループのチューターの講義評価の差が解消されるのだろ うか?
  統計分析の結果、上述のような特徴を持つデータを使用したにもかかわらず、二つのグループ のチューターの講義評価には統計的に有意な差があることが観測された。他の条件を一定にし た時、英語を母国語としないチューターの講義評価は、英語を母国語とするチューターの講義 評価より(7段階評価で)0.63ポイント低いのである。この差を生み出しているのが何かを 分析することは、データの制約上本報告では不可能であったが、採用されるチューターや大学・ 学部にとって重要な問題であることは間違いない。