【2009/4/30 経済学部ワークショップの模様】

近現代地域問題研究会

近江絹糸人権争議から学ぶべきこと
:上野輝将『近江絹糸人権争議の研究』合評会

上野輝将(神戸女学院大学名誉教授)


『近江絹糸人権争議の研究』(2009年刊、部落問題研究所)の著者上野輝将氏をお招きし、ご著書の核心部分をご説明いただき、その後本学筒井正夫・大和田敢太・荒井壽夫・山田和代の各教員から、本書に対するコメントがなされた。

そこで確認された本書の意義は、近江絹糸争議を単なる労働争議と位置付けずに、工場における民主主義の拡大、基本的人権の拡充を果たした社会運動であり、しかも工場や企業内に止まらず、その影響は当時の経済界、労働界、政界、ジャーナリズム、また文学等にも広範に及び、戦後民主主義の国民への定着に大きな役割を果たしたこと、また本書では特に争議に立ち上がって行った女子従業員の主体的な活動にも光が当てられた。

問題点や課題として指摘された点は、上記のような優れた点は認められるが、肝心の労働条件の改善やそれをめぐる労使間の具体的な対決や交渉過程が不鮮明であり、労働争議分析としての姿が見えにくいことである。

こうしたやり取りの後、会場に居られたこの争議に参加した指導者たちから、複数の発言があり、本書の総合的で実証的な高い価値が評価されるとともに、労働条件の改善の点については、むしろ争議の後の労使間の厳しい交渉過程において漸次現実的に改善されていったことが述べられた。

最後に、企業分析や労働問題分析に欠かせない資料の収集を本学として意図的に行っていく必要性と、また本学経済学部の学生や教師もこの争議に関わり、相応の役割を果たしていた点の解明が今後なされるべきであることが確認されて、終了した。   総じて、本書の多面的な検討を通じて、近江絹糸争議の果たした歴史的意義があぶりだされた有意義なワークショップであった。   

※ 参加者 教員10名・学生7名 社会人13名 計30名                 (筒井正夫)