【2009/10/11 経済学部講演会の模様】

Text and History: Joyce Revisited
--Ghosts Through Absence

Ellen Carol Jones
(フェリス女学院大学、客員教授)

  ジェイムズ・ジョイスを中心に、フェミニスト的アプローチを加味した 研究を様々に発表し、かつ、アメリカを中心に多くの大学で教鞭を取ってきているジョーン ズ先生が、ジョイスの作品を分析するなかで、特に、ダブリンという都市に打ち立てられた 「記念碑」が人々に共通する「記憶」にいかに影響を与えるかということと絡めて講演され た。

 ジョイスの作品は、すべて、現在アイルランドの首都であるダブリンについてのものであ る。そのジョイス作品のなかでも、アイルランド自由国成立以前、つまり1922年以前のジョ イスの作品に焦点を絞り、ダブリンに公共の記念物として建てられた「見せ物」が、どのよ うに人々に共通する記憶を生み出し、その記憶を支配し、また、さらにそのような記憶に基 づいて機能するかを、ジョイスが、作品内でどのように示したかを以下のように説明された。 まだ実現されていない未来を投影する事によって、皆に共通する記憶が作られる。しかも、 その投影は決して起こらなかった過去を懐古的に並べていることでなされている。これをジ ョイスは、作品のなかで批判しパロディ化することによって示したということを、ダブリン 市内に立つ建物や彫像の画像を提示しながら、講演された。ジョイスの作品、特に『ユリシ ーズ』は、彼の同世代人である、ドイツのW.ベンヤミンが”time of the now”と呼んだもの を示している。ベンヤミンの歴史、modernity,帝国主義、資本主義、政治、文化分析は、『ユ リシーズ』が「反記念物」として機能していることの説明となっている。帝国主義者と資本主 義者の現代性が継続して続くこと中断させたり、封じ込められた過去の亡霊たちに注目したり、 中心的な都市でありながら植民地として周縁に位置しているダブリンという都市を特徴づける 暴力を歴史の前面に打ち出したりすることで、『ユリシーズ』は「反記念物」として機能して いると、ジョーンズ先生は解釈する。

 難解なジョーンズ先生の理論が、19世紀末から20世紀初頭のダブリンの画像を見せて頂 くことで、分かりやすく解明されて行った。                           (真鍋晶子)