【2009/10/11 経済学部講演会の模様】

Iconic and Filmic Joyce

Morris Beja
(オハイオ州立大学名誉教授)

 ジョイスの研究をすれば、必ずその研究は避けて通れない、ここ数十年 第一線で活躍してきたジョイス研究者モーリス・ベジャ先生の本領を発揮する、まさにジョ イスについての講演であった。彼は現在スタンリー・キューブリックについての研究書に取 り組んでいるほど映画に対する造詣も深く、今回の講演は、ベジャ先生が生涯をかけて取り 組んできた2つの対象であるジョイスと映画が有機的に絡み合ったものであった。

 文学作品としてのジョイスのテクストそのものについてではなく、そのジョイスのテクス トがいかに社会的なiconとして用いられ受け入れられてきたかを、特に英米の映画を中心に、 映像を交えて語るものであった。映画だけでなく、ジョイスの作品がいかに様々なコンテク ストで利用されてきたかを文化的な側面に光をあてて、ヴィジュアルな資料多く紹介しなが らの分析であった。今や文学研究の世界で、キャノンと化しているジョイスの作品であるが、 これまでしばしば、いかにPopular Cultureの文脈で引用されてきたかということを、多くの 映画からの抜粋を実際に提示しながらで示された。ジョイス作品の一部が台詞に利用されてい たり、背景に使われていたり、テーマやストーリーそのものが利用されていたりと、ジョイス 作品を読んでいる人には映画に重層的に情報を加えることが、映画の抜粋をベジャ先生の様々 な切り口で、説明されて行くことで、明らかにされていった。また、いわゆる「ジョイス産業」 が生まれた経緯も明らかになるものであった。

 ジョイスの作品を読んだことの無い人にも、わかりやすく、また、ジョイスを食わず嫌いで いた人にも、親しみやすい、講演であった。                             (真鍋晶子)