【2009/2/13 経済学部ワークショップの模様】

Economics Workshop 2008
サザエさんの視聴率と株価のなぞ

中野桂 准教授

  「『サザエさん』と株価の関係―行動ファイナンス入門―」(吉野貴晶著、新潮新書、2006年)では、2003年から2005年までの2年間の「サザエさん」視聴率(26週移動平均)と株式市場(TOPIX、26週移動平均)の関係を調べ、相関係数−0.86という強い負の相関関係を見出したことが紹介されている。この関係を説明する仮説として、サザエさんの視聴率が日曜日夕方の在宅率の代理変数であり、景気が良いと外食などに出かけて、在宅率(すなわちサザエさんの視聴率)が下がるという仮説が示されている。

  そこでわれわれはまず、独自に入手したデータで吉野の結果を再現できるかどうかを検証し、さらに吉野(2006年)の調査期間より長期にわたって同様の結果が出るのかどうかを調査した。その結果、2001年から2005年の期間では吉野の結果は再現できたものの、それ以外の期間(1989−2001,2005−2006)や全期間(1989−2006)ではむしろ逆に正の相関があることが示された。

  一方、サザエさんの視聴率が日曜日夕方の在宅率の代理変数であるという仮説については、外食に関する様々統計を検証したが、支持する結果は得られなかった。 そこでさらに詳細に分析を進めると、「サザエさん」の視聴率と株価(日経平均)の間には2年のラグを想定すると極めて強い正の相関が―株価が高いと2年後のサザエさんの視聴率が高い―存在することを発見した。すなわち、景気の遅行指数としての特徴をサザエさんの視聴率は持っていることが分かった。そこで、さらに、コールレートや雇用統計(雇用者数前年比)などとの関係も見ると、株価=>コールレート=>雇用=>サザエさんの視聴率との間にも正の相関が存在し、それぞれが一定のラグを持って推移していることが分かった。

  今後は、株価とサザエさんの視聴率との間に何らかの因果関係があるのか(あるいはないのか)、そしてあるとするならばどのようなロジックがそこに存在するのかなどの検討が必要である。具体的には、我々はすでに他のテレビ番組(「ちびまる子ちゃん」「ドラえもん」「渡る世間は鬼ばかり」「笑点」など)の視聴率などについても同様の傾向があるのか分析を進めているが、ワークショップでは参加者からその他の可能性についても極めて有益なコメントが出された。今後は学会等でこの問題を一つのパズルとして投げかけてみたい。 (文責:中野桂)