【2009/1/29 経済学部ワークショップの模様】

Texture in Cultural Backyard V
言語と文化の相同性を考える−言語に現れる文化的特徴と文化に現れる言語的特徴

多々良直弘
  (桜美林大学文学部・リベラルアーツ学群
   専任講師)

  多々良直弘氏のご報告は、日本語と英語(主にアメリカ英語)を比較することで、それぞれの母語話者の「好まれる事態把握」の違いが、言語にまつわる様々なレベルで現れていることを示すことであった。

  はじめに、言語学で従来から言われている、日本語は「過程志向」であるのに対して英語は「結果志向」であることを語彙レベル・文レベルで示している先行研究を概観した後、このような志向性が、テキストレベルにおいても見られるということを、日英のスポーツ記事をデータとして検証した。例えば、英語のHeadlineでは、試合結果とその結果を生み出した直接的原因との論理的関係を明記する傾向が強い(結果志向的・因果関係的)のに対し、日本語の見出しでは、個人のプレーのみに言及したり、試合結果を明記せずに試合中に起こったことを個々に描写する傾向が強い(過程志向的・現象志向的)ということを、豊富な例を用いて示して見せた。また、記事の終わり方にしても、英語では、当該の試合の内容だけを述べることで完結させることが多いのに対し、日本語では締めくくりとして次の試合への展望を記者が述べることも珍しくないことを指摘し、これも、従来から言われている英語の有界性と日本語の無界性(例えば、英語では可算名詞・不可算名詞や動作動詞・状態動詞の区別を明示的に示すように、対象物や出来事を有界性によって特徴づけているが、日本語ではそのような傾向が弱い)とパラレルに考えることができると主張した。

  報告後の質疑応答では、このような志向性をどこまで一般化できるか、もしくはしてよいかという点について、様々な分野の参加者と交えて、非常に有意義な、また本ワークショップの主旨に沿った議論がなされた。参加者5名。(文責:出原健一)