【2009/1/15 経済学部ワークショップの模様】

Texture in Cultural BackyardV
客家語から見た日本語、日本語から
見た客家語

田中智子(神戸夙川学院大学講師)

  このワークショップでは、客家語(はっかご)と日本語の受動文の比較を通して、両者の言語構造の違いを明らかにする試みがなされた。客家語は、北京語、上海語、広東語などのような漢語諸語のひとつである。中国大陸南部に話者人口が多く、梅県にて話される客家語が客家語の「標準語」とされている。同時に、客家語の話者が移民することにより、中国大陸以外にも台湾、東南アジア、アメリカその他の国にも、話者が分布している言語である。1982年の統計では、中国本土、台湾、海外華僑などすべてを含めた客家人口は4500万と推定されている。田中智子氏は、台湾で話される客家語に注目し、研究をおこなっている。
  今回のワークショップでは、田中氏が台湾の美濃鎮にておこなったフィールドワークで収集したデータを使っての分析がおこなわれた。誰もがよく知っている口承物語「はなさかじいさん」の「語り」を、「自然な客家語」の例として、客家語の話者からデータを収集したところは興味深い。「はなさかじいさん」の例文の分析を通して、日本語では、名詞句の階層が低いものが動作主になる場合に、能動文よりも受動文が使われることが認められるが、客家語では特に名詞句階層の高低は、能動文か受動文かの選択に影響を与えていない可能性が高いことが報告された。また、日本語の受動文にはない概念として、北京語や客家語の場合、受動文は被害の意味をあらわすときに用いられることが多いとの報告がなされた。しかし、北京語と違い、客家語では被害の意味をあらわさないときにも受動文が使われることがあることから、今後の課題として研究をすすめるとのことであった。
  報告後は、客家語における動作をしめす語法についての質問をはじめ、言語グループの分け方、発音をしめす記号表記などについて、質疑応答がおこなわれた。現在、客家語のTV番組の放送がなされるなど、さまざまな試みがもたれているようであるだが、「客家人」といえども、学校で話す言語である北京語しかはなせない子供たちも増えているという。言語学上の問題についてだけではなく、言語と民族の問題についても議論が発展したワークショップであった。(文責:菊地利奈)