【2008/11/29 経済学部講演会の模様】

中小金融機関の合併

星野靖雄
  (愛知大学会計大学院教授
   ・ 筑波大学名誉教授)

  最近の合併・買収(M&A)の特徴として、金融危機の直前までは日本企業によるM&Aは5年連続で10兆円を超え、特に日本企業による海外企業のM&Aは6兆6678億円で前年比3.5倍強に増加している。M&Aは経営効率を高める手段として重要であり、企業価値を高めるようなM&Aを実施することが経済の活性化に必要である。

 日本でのM&A研究のサーベイでは、上場企業によるM&Aの効果では株価による研究では概して買収企業、非買収企業とも株価に正の効果があるが、会計データでは収益性は負である場合や対等合併での労働生産性の減少する場合と生産性が改善される場合が混在している。

 中小金融機関の合併では昭和46年に合併した13信用金庫の同種合併で、合併10年前後の合併信用金庫と同一都府県での預金量による規模の一番近い非合併信用金庫の19経営指標を平均値の差の検定での比較分析をした。これにより総資金運用利回り、自己資本比率、経常収支率、利益率、一店舗当たり預金量で負の効果が見いだされた。昭和49年から57年までに合併した信用組合11組合の場合では、19経営指標により合併5年前後で非合併信用組合との平均値の差の検定による比較分析を実施した。預け金利回りのみ正であったが、貸出金利回り、預金貸出金利鞘、総資金運用利回り、利益率で負の効果が見られた。相互銀行(第2地銀)と信用組合昭和44年から52年までの20件の異種合併では、合併後の方が相対的に預金原価率、総資金運用利鞘で正の効果、生産性関連の一店舗当り預金量、常勤役職員一人当たり預金量でも合併効果が正となった。米国信用組合(Credit Union)の合併では、1986年における346組合(合併率3.39%)の合併の効果を州別に総資産規模の一番近い非合併組合との比較により分析すると、非収益資産比率、総資産純利益率で負の効果があり、相対的経営指標でも純不良貸付金比率、総資産純利益率で負の効果があり日本と同様の結果となった。日本の農協の合併効果は岐阜県での昭和43年から57年までの12件の農協合併(58合併農協)と12非合併農協を14経営指標で比較分析した。流動比率、貯金対現金預金比率、常勤役職員1人当たり事業管理費で負、貯金対貸付金比率で正、収益性指標では有意差はなく、全体としてやや負の合併効果となった。

 米国でのM&A研究の最近のサーベイによると、株価データでは被買収企業の株主にとっては、分析期間、合併か買収にかかわらず25件で正の超過収益率が得られ、買収企業の株主には、22件で負(14件有意)、32件で正(23件有意)の超過収益率が得られ、被買収・買収企業合同の株主ではほとんどすべてで正の収益率あるとしている。ただし、買収企業の株主の長期への収益率では11/16で有意で負の効果があるとしている。また、会計データでは16件中9件が負、4件が正、中立が1件、指標により正・負の混在2件であり合併効果は負となっている。  (星野靖雄)