【2008/5/31 経済学部講演会の模様】

電子帳簿に求められる新しい簿記手続
   林繁一(林会計事務所)
複式簿記の経済分析
   田口聡志(同志社大学) 梶原太一(同志社大学大学院)
会計基準のコンバージェンスと複式簿記
   松本敏史(同志社大学) 浦崎直浩(近畿大学)
   草野真樹(大阪経済大学) 田代樹彦(名城大学)
   岩崎勇(九州大学)

  午前中には高須教夫氏(兵庫県立大学)の司会のもと,林繁一氏(林会計事務所)による「電子帳簿に求められる新しい簿記手続」,および田口聡志氏(同志社大学)・梶原太一氏(同志社大学大学院)による「複式簿記の経済分析」という2つの報告がおこなわれた。
  午後からは,「会計基準のコンバージェンスと複式簿記 〜簿記の視点から会計の動向を読み解く〜」というテーマで,松本敏史氏(同志社大学)の司会のもと,4つの報告がおこなわれた。
  第1報告は,浦崎直浩氏(近畿大学)による「公正価値会計における損益認識と複式簿記の意義」である。氏は,IASBとFASBの収益認識プロジェクトを素材として公正価値会計の展開の構図を明らかにし,簿記の意義を検討された。結論として,経済活動がいかに変化しようと,経済活動や環境変化が経済的ポラリティを有する限り,複式簿記はその経済的実質を写像する有用な記録機能を有すると主張された。
  第2報告は,草野真樹氏(大阪経済大学)による「金融商品の公正価値会計と複式簿記―ローン・コミットメントを中心として―」である。氏は,金融商品の公正価値会計を素材として複式簿記への影響を検討された。結論として,公正価値会計では確定的な現金収支にもとづいて取引が記録されるとは限らず継続記録の重要性が低下するが,フロー情報によって投資家の意思決定に有用な情報を提供するためには,確定的な現金収支にもとづく取引の継続記録が必要であると主張された。
  第3報告は,田代樹彦氏(名城大学)による「公正価値測定と複式簿記〜受託責任の観点を踏まえて〜」である。氏は,受託責任の観点から公正価値測定と複式簿記の関係を検討された。結論として,会計責任の観点からはオンバランス化は経営者の責任に含まれることになるため公正価値情報の提供と公正価値測定(オンバランス化)は無差別ではなく,複式簿記の記録機能を拡張しつつ会計責任のための記録と情報提供のための記録とにわけることを主張された。
  第4報告は,岩崎勇氏(九州大学)による「公正価値会計モデルと複式簿記の必要性―会計基準のコンバージェンスとの関連において―」である。氏は,会計基準のコンバージェンスに伴って,複式簿記の必要性が変わるか,複式簿記の機能・形態に変化はあるか,簿記・会計手続面から複式簿記に与える影響は何かについて検討された。結論として,会計理論的には大きな影響を及ぼすが,複式簿記の基本的原理(機能)には影響を及ぼさないと主張された。
  これら対して,足立典照氏(元大阪学院短期大学),齋野純子氏(甲南大学),柴健次氏(関西大学),田口聡志氏(同志社大学),村橋剛史氏(朝日大学),藤井秀樹氏(京都大学)から質問がよせられ,公正価値会計の意義,会計目的と利益概念の関係,収益認識における投資回収額による測定などについて活発な討議がなされた。最後に座長の松本氏より,お釈迦様の手のひらで踊る悟空の話を引き合いにだし,数々の会計現象を仕訳を通して考えていること自体が複式簿記の必要性・普遍性を示しているとの総括がなされた。
  参加者は,のべで93名であった。