【2007/11/27 経済学部講演会の模様】

国際金融の現状とリスク
―サブプライム問題と金融危機の回顧と展望―

高田 創   (みずほ証券 市場営業グループ
市場調査本部統括部長 チーフストラテジスト)

   日本経済の第一線で活躍しておられる高田 創(たかた はじめ)氏の講演を聴講しようと、立ち見も含め教員・学生・院生等約650名の大聴衆の中で、福田経済学部長の謝辞と経歴紹介の後、講演が開始された。
  高田氏の分析方法は、グローバルな視点から世界経済、国際金融、日本経済、日本の金融システム・金融政策を分析しようとするものである。@「1971年」、「360円」 A「市場化」、「グローバル化」 B「ISバランス」 C「金融危機」 D「デジャビュー」、「歴史は繰り返す」 E「バランスシート調整」 F「直接金融」、「間接金融」、「市場型間接金融」の7つのキーワードを、全35ページのレジュメの中に散りばめて、講演が進行していった。
  まず1971年を、グローバル化、市場化の出発点として捉え、固定相場制の転換がもたらす海外との連動、金融政策のシンクロナイゼーション、日本の金融制度の段階的自由化、日本企業の自由化への更なる直面、新たな国際金融の出発点の年として位置づけられた。そして為替市場の変化を概観しながら、「円高恐怖症候群」とも言える世論の「円高の不安の歴史」について言及され、日本の金利自由化、金融制度の自由化の歴史についても考察された。
  つぎに世界的な資金の流れを鳥瞰し、その中での日本の金融の位置づけ、日本からのリスクマネーは限定的で、収益性が低下したこと、「(S−I)+(T−G)=(X−M)」すなわち「民間貯蓄+財政黒字=経常収支」のフレームワークで、日本の貯蓄余剰が継続していること、日本の外貨準備の増大と海外資産保有の拡大について言及された。そして1987〜94年までの日米金融市場動向を比較しながら、市場化、グローバル化での危機の伝播とブラックマンディの教訓、日銀のブラックマンディでのトラウマについて分析され、さらにメキシコ・中南米危機の教訓、1997・98年通貨危機の教訓から、過去のパターンでは「利上げ局面では金融危機が生じていたこと」を指摘された。
  そして高田氏が名づけられた「日銀の5回目のジンクス」では、日銀の過去4回の利上げは常に世界的利上げ環境下で行われ、常に最後に利上げし、日銀の利上げの翌年は世界的減速になっていることを実証された。このジンクスに従えば、日銀が利上げをした2006年年7月の翌年である2007年はグローバルに信用拡大の調整が生じる年ということになる。サブプライム問題や原油価格高騰、金融商品不況、金融機関不況もその現れと位置づけられることになる。
  また今回のサブプライム問題は、2000年の米国ITバブル崩壊の危機的状況を補完した住宅セクターやSPV(住宅資産流動化における小口化のための道具立て)の「行き過ぎ」の結果であり、バランスシート調整の全容が掴めず、予想以上の深度があり、1990年代の日本の不良債権処理を参考にして対応すべきではないかとの提言も行われた。世界経済を揺るがせている現在進行形の重要な問題であり、聴衆はその内容に惹きつけられ、有意義な1時間20分であった。
  今回の講演は、力石伸夫滋賀大理事と、滋賀銀行の尽力によるものである。また膨大なレジュメ作成を快く引き受けて頂いた経済経営研究所の皆様にも併せて謝意を表したい。
  (経済学部教授 有馬敏則)